研究課題/領域番号 |
19K09003
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
福岡 秀規 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (80622068)
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研究分担者 |
高橋 裕 神戸大学, 医学研究科, 准教授 (70301281)
山田 正三 (財)冲中記念成人病研究所, その他部局等, 研究員 (80260131)
青井 貴之 神戸大学, 科学技術イノベーション研究科, 教授 (00546997)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | クッシング病 / オルガノイド / 長鎖ノンコーディングNRA |
研究実績の概要 |
クッシング病は下垂体腫瘍の中でも診断、治療がむつかしい疾患であり、その薬物治療開発を進めることが急務である。クッシング病の原因であるACTH産生下垂体腺腫(ACTHoma)は最近の研究によりその半数がUSP8遺伝子の異常が原因となっていることが示されているが、その特徴としてホルモン分泌能は高い一方、比較的小さな腫瘍である事が知られている。一方ACTHomaの20%は1cmを超えるマクロ腺腫で、増殖浸潤能が高く、手術による緩解率が不良であるため、臨床経過に難渋することが多い。しかし、ACTHomaがどのように増殖性、浸潤能を獲得するかは明らかでない。本研究は、ACTHomaの浸潤増殖性を規定する因子を明らかにし、今後の治療標的としての可能性を探ることを目的としている。以前我々はACTHomaにおいて浸潤性を持つ腫瘍と持たない腫瘍におけるRNA発現をマイクロアレイを用いて検討したところ、その浸潤性、増殖性と関連する因子として長鎖ノンコーディングRNA(LncRNA)であるCRNDEを同定した。CRNDEは大腸癌、神経膠腫、肺癌、乳癌、腎細胞癌などにおいて増殖浸潤性に関連する因子であることが近年明らかにされ、現在ACTHomaにおいてCRNDEがどのように増殖、浸潤性を規定してるのか、その発現抑制が治療標的となりうるのかを検討している。また、CRNDEは種、臓器特異性が高いことが想定されるため、ヒト由来ACTHoma研究のモデルとしてACTHoma術後検体を用いたオルガノイドの作成を同時に行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
我々はCRNDEと蛋白を結合させることのできるMS2結合サイトを融合させたfusion proteinを発現するレンチウイルスベクターの作成に成功した。この発現ベクターを用い、現在ACTHomaオルガノイドへのCRNDE強制発現を試み、その増殖能、ACTH合成分泌能について検討している。増殖能は3D細胞ライブセル定量イメージャーであるDuosを用い、刺激条件に伴う3D細胞の大きさの増大、数の増生について定量化できている系を確立した。ACTHomaのオルガノイドにおける増殖能を調節するさらなるニッチ因子についての検討も進めており、現在因子1、因子2についてその効果を認めているが、再現性を確認している。
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今後の研究の推進方策 |
上記実験によりCRNDEがACTHomaの増殖性を促進していることが明らかとなれば、以降の実験を予定している。CRNDEはACTHomaの細胞質に多く局在していることが我々の検討により明らかとなっている。このことはCRNDEがmiRNAと結合し、浸潤性を来ていることを示唆している。その事から、CRNDE-MS2のレンチウイルスベクターとMS2-GFP発現ベクターをACTHomaオルガノイドに共発現させ、GFPを用いた免疫沈降によりRNA沈降を行い、これに対して結合しているmiRNAの網羅的解析をRNAseqを用いて行う事を計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度にRNAseqなどの多額の支出が必要な実験があるため、次年度使用に持ち越すこととなった。
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