研究課題/領域番号 |
19K09008
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
佐藤 叔史 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (90622598)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 糖尿病 / β細胞代償機構 |
研究実績の概要 |
インスリン抵抗性時には、血糖を正常に保つためにβ細胞量を増加させインスリン分泌を亢進させる代償機構が働くことが知られている。しかし代償機構が破綻すると糖尿病が発症するが、この分子メカニズムは未だ不明な点が多く残されている。申請者は代償性に肥大した膵島が慢性的な低酸素に曝されていること、さらにそのような低酸素ストレス下では転写抑制因子BHLHE40とプロリン水酸化酵素PHD3が高発現していることを新たに見出した。本研究では、①慢性低酸素によるβ細胞障害性を検討する。②BHLHE40とPHD3の発現誘導機構および機能を解明する。③代償機構におけるBHLHE40とPHD3の役割を明らかにする。④BHLHE40およびPHD3を標的とした糖尿病治療の可能性についても検討する。本課題遂行により、β細胞代償機構の病態生理学的理解がすすみ、β細胞の機能回復を目指した糖尿病治療に繋がることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和1年度は、研究概要に示す4課題に対して次年度以降円滑な研究実施のために実験設備や実験材料のセットアップを行った。課題①に関して低酸素環境下で細胞を長期培養を可能にする培養装置および2波長の蛍光をモニターできる蛍光検出器を導入した。またマウスを長期的に低酸素環境下で飼育するチャンバーをセットアップした。課題②に関しては、BHLHE40およびPHD3を過剰発現およびノックダウンしたMIN6膵β細胞株を樹立した。BHLHE40過剰発現細胞を用いて、RNAシーケンスを行ったことで複数のBHLHE40標的候補遺伝子を同定した。課題③、④に関してはBhlhe40 floxマウスおよびPhd3 flox マウスを導入して、膵β細胞特異的Cre発現マウスと掛け合わせ、膵β細胞特異的ノックアウトマウスを作製した。膵β細胞特異的Bhlhe40ノックアウトマウスに対して耐糖能試験を行った。MIN6細胞に対してPHD3を過剰発現し膵β細胞機能を検討した。これらの進捗を加味し、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度(2年目)は、立案した計画通りに培養細胞を用いた基礎データの取得およびノックアウトマウスを用いたin vivoの解析を進めていく予定である。課題①では長期培養した細胞のプロファイリング(インスリン分泌能、細胞増殖能、細胞死の評価)を行う。メタボローム解析を行い細胞内代謝産物の解析を行い、慢性低酸素がβ細胞の代謝に与える影響を検討する。また低酸素環境で飼育したマウスのβ細胞でも起こるか検討する。課題②では作製した過剰発現細胞およびノックダウン細胞を低酸素に暴露した後、BHLHE40とPHD3のβ細胞に対する作用を検討する。RNA-seq解析あるいはプロテオーム解析を行うことで各種標的タンパク質の同定を行う。課題③では膵β細胞特異的ノックアウトマウスと肥満糖尿病モデルマウスを掛け合わせを進めていく。さらに糖代謝解析を行うことで糖尿病におけるBHLHE40とPHD3の役割を明らかにする。課題④ではPHD阻害剤(Salidroside、DMOG、DFO)を肥満糖尿病マウスに持続投与し、β細胞機能(インスリン分泌、細胞増殖、細胞死)、膵島面積や糖尿病の発症増悪がどのように変化するか検討を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度以降にまとまった予算が必要となる研究(実験)が見込まれたため。
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