研究課題/領域番号 |
19K09009
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
丸山 圭介 宮崎大学, 農学部, 准教授 (20612386)
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研究分担者 |
張 維東 宮崎大学, 医学部, 助教 (90753616)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 新規ペプチドホルモン / ニューロメジンU / ニューロメジンU関連ペプチド / NMU / NURP / プロラクチン |
研究実績の概要 |
本研究は新たに見出されたペプチドホルモン、ニューロメジンU関連ペプチド(NURP)の機能解析を主たる目的とし、NURP発現ニューロンの形態学的な特徴付けと生理作用の解明を進めるものである。 これまで免疫染色に使用可能なNURP抗体が存在せず、NURP発現ニューロンの局在は不明なままである。そこでNURP発現ニューロンの可視化を目的として、昨年度、専門業者に依頼し、ラットNURPに対する特異的抗体を作製した。本年度は、作製した抗体を用いた免疫染色を実施し、実験条件の最適化を本格的に進めた。サンプルの作成方法、発色法、増感法などにおいて、種々の方法を試行したものの、これまでのところ特異的な免疫陽性反応を、残念ながら得られていない。 これまでに、NMUあるいはNURPをラット側脳室へ投与して、その後のc-fos発現の分布を比較したところ、NMUの投与では室傍核や視索上核を中心に、主に視床下部領域に多くのc-fos発現が認められた。一方、NURP投与では腹側海馬台と呼ばれる神経核にc-fos発現が観察された。腹側海馬台は海馬の延長線上にあり、情動行動や不安行動に関連する脳領域であると考えられている。そこで本年度は、NURP投与ラットの脳切片に対して、c-fos抗体と各種ニューロンマーカー抗体(GAD67、VGLUT1、TH2)との蛍光二重免疫染色を実施した。その結果、c-fos陽性ニューロンの多くがGAD67陽性であることが観察された。すなわち、NURP投与により活性化する腹側海馬台のニューロンの多くは、GABA作動性ニューロンであることが見出された。このことから、NURPが不安行動の抑制に関与していることが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概要の項目において述べた通り、本年度、NURPに対する特異的抗体を用いた免疫染色については、実験条件の模索が続き、明瞭な特異的免疫陽性反応を得られていない。この点については、進捗状況が芳しくないが、まだ試行できていない手法もあるので、それらの検討を早急に進める。また、来年度はNURPが多く発現する条件(環境、エネルギー状態、性周期など)を、その他の実験から明らかにし、NURP免疫陽性反応が得られ易いサンプルを用意することも、打開策のひとつとして考えている。 昨年度の研究において、NURPの標的領域のひとつとして新たに腹側海馬台を見出した。そこで本年度は、このNURP投与により活性化するニューロンが、どのようなニューロン群であるか、蛍光二重免疫染色を用いてその特徴づけを進めた。その結果、NURP投与により活性化する腹側海馬台のニューロンの多くは、GABA作動性ニューロンであることを明らかにした。本実験については順調に進んだと考えている。 さらに本年度は、NURPが自発行動量に及ぼす影響や、NURPのプロラクチン分泌亢進作用の作用機序の探索などを進めることができ、全体として概ね順調に進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在も進めているNURP特異的抗体を用いた免疫染色、プロラクチン分泌亢進作用の作用機序の探索を継続する。また、ラットの各性周期あるいは、妊娠期や授乳期においてNURPの発現がどのように変化するか明らかにし、NURPのプロラクチン分泌亢進作用の生理的意義を探る。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は適正に物品を購入したが、予定していたより多少少額になった。来年度は、遺伝子発現解析が中心となる予定のため、その試薬・消耗品購入に充当する。
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