本研究は新たに見出されたペプチドホルモン、ニューロメジンU関連ペプチド(NURP)の機能解析を主たる目的とし、NURP発現ニューロンの形態学的な特徴付けと生理作用の解明を進めるものである。 これまで免疫染色に使用可能なNURP抗体が存在せず、NURP発現ニューロンの局在は不明なままである。そこで本研究では専門業者に依頼し、ラットNURPに対する特異的抗体を作製した。昨年度に引き続き、本年度も作製した抗体を用いた免疫染色を実施し、実験条件の最適化を本格的に進めたが、特異的な免疫陽性反応を得られていない。 そこで、最終年度である本年度は、プロラクチン分泌におけるNURPの生理機能の解明を進めた。NURPとニューロメジンU(NMU)は、同一の前駆体からプロセシングにより、それぞれ別個のペプチドホルモンとして切り出される。にもかかわらず、プロラクチンの分泌調節においては、NMUがプロラクチン分泌を抑制するのに対して、NURPはプロラクチン分泌を亢進する。特に本年度、雌ラットの側脳室へNURPを投与し、血中プラクチン濃度の変化を調べたところ、NURPがプロラクチン分泌を強力に促進することを見出した。しかしながら、相反する作用を有するNURPとNMUをコードする遺伝子が、生理的条件下においてどのように発現変化しているのか、不明である。そこで、生理的にプロラクチン濃度が増加する条件下において、NMU/NURP mRNAの発現変化を調べた。具体的にはまず、発情前期の雌ラットを用いて、子宮頚部を機械的に刺激して偽妊娠ラットを作成した。数日後、二峰性のプロラクチンサージが誘起される時間帯に、この偽妊娠ラットの視床下部を経時的にサンプリングし、リアルタイムPCR法により発現変化を解析した。その結果、プロラクチン濃度が高くなるにつれ、NMU/NURP mRNA発現が減少することが明らかになった。
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