研究課題/領域番号 |
19K09010
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
島田 朗 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (60206167)
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研究分担者 |
及川 洋一 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (30296561)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 糖尿病 / 細胞性免疫 |
研究実績の概要 |
KPD(ketosis-prone diabetes)の病態解明を目的として、当科におけるKPD症例に対し、ELISPOTによる細胞性免疫能の評価、ならびにHLAタイピングを行った(当院IRBの承認を得た書面による同意を取得の上施行)。当科におけるKPD患者(罹病期間3年未満かつ、初回のケトーシス患者を対象)の血液を採取し、インスリンペプチドに対してIFN-gammaを生産するT細胞が検出されるかどうかをELISPOT法により評価した。インスリンペプチドとしては、過去に日本人1型糖尿病におけるT細胞反応性が報告されているインスリンB9-23、B10-24、B11-25、B12-26を用いた。HLAタイピングに関してはDRB1、DQB1、およびAを調査した。KPD群(男性21名、女性0名、平均年齢40.3歳)の33.3%(21人中7人)がELISPOT法で陽性であり、1型糖尿病群の35.7%とほぼ同じレベルであった(典型的2型糖尿病群は2.9%)。KPD患者においてELISPOT陽性群(7名)、陰性群(14名)について比較検討したところ、陽性群におけるHLA-A*02:01、もしくはA*24:02の保有率が有意差をもって陰性群に比べて高かった。また、陰性群に比して、陽性群ではCPR(Cペプチド)値が有意差をもって低値であった。これまでの検討では、ELISPOT陽性のKPD患者において、HLA-A*02:01、もしくはA*24:02の保有率が高く、さらに、インスリン分泌能は、陰性群に比べてより低い可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、 細胞性免疫能については以前のパイロット研究の成績の再現性を確認し、また、HLAとの関係についても新しい知見を得ている。さらに、臨床パラメータであるCPR(Cペプチド)値を用いたインスリン分泌能についても細胞性免疫、HLAとの関係を見出しており、われわれが仮説として提示しているように「KPDが1型糖尿病の新しいサブタイプである」ことを示唆する成績を得つつある。
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今後の研究の推進方策 |
細胞性免疫能、特に抗原特異的T細胞反応性の評価について、これを専任で行う常勤の実験補助者もいるが、これまで主として行ってきたインスリンペプチドを用いた検討のみならず、別の膵島関連抗原としてGADを用いた検討も増やす計画である。また、糖尿病患者のデータベース、血液などの検体管理システムもすでに確立しており、別の研究補助者が常時管理しているが、研究補助者の増員などによる効率化を行い、さらに件数を増やせる体制を構築していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は、臨床検体を用いており、症例数については、一定のペースで増えていくとは限らないのが実状である。また、ある程度の検体数がまとまった上で測定する項目もあり、当初の予定よりも年度内に測定する検体数が結果として予想よりやや少なくなったために、次年度に繰り越して使用することとなった。
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