肥満があるにも関わらず、特別な誘因なく、ケトーシスになる”ketosis-prone diabetes(以下、KPD)”という概念は、米国糖尿病学会でも”atypical diabetes”とされ、いわゆる分類不能例に該当する。KPDの50%は、誘因なく糖尿病ケトアシドーシスを起こし、糖尿病ケトアシドーシスの20%は、KPDにより起こるとされており、極めて重要な病態である。 このKPDにおいて、我々は、1型糖尿病において認められるインスリンペプチド反応性T細胞を検出し、膵島関連細胞性免疫異常が存在することを見出した。さらに、この膵島関連細胞性免疫異常がKPDにおける疾患活動性を反映する可能性を示した(J Clin Endocrinol Metab.2022 Apr 19;107(5):e2124-e2132.)。ただし、HLA型については、日本人1型糖尿病の疾患感受性であるDRB1*04:05、DRB1*09:01のアリル頻度は健常人と差はなく、DRB1*08:03が有意に多いことを見出した。 一方、膵外分泌酵素(アミラーゼ、リパーゼ、エラスターゼのいずれか)異常については、KPDは1型糖尿病とほぼ同じレベルであった。DRB1*08:03は、外分泌腺、あるいは、導管に対する他の自己免疫疾患との関与が知られていることから、KPDにおいて、DRB1*08:03の有無による膵外分泌酵素異常の割合を比較したところ、DRB1*08:03を有する場合、有さない場合に比して、有意に多いことを見出した。 以上により、KPDにおいては、膵外分泌組織、あるいは、膵管に対する自己免疫応答の存在が示唆され、この免疫応答を制御することが、KPDの新たな治療に結びつく可能性があると推察された。
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