研究課題/領域番号 |
19K09011
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
佐藤 雅 北里大学, 医学部, 講師 (40611843)
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研究分担者 |
岩渕 和也 北里大学, 医学部, 教授 (20184898)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | NKT細胞 / 肥満 / 腸内細菌叢 / 脂肪組織 / マクロファージ |
研究実績の概要 |
申請者はこれまでに、NKT細胞と肥満の関係性について研究を行ってきた。肥満は、慢性炎症状態にあると考えられており、NKT細胞はその炎症の誘導に重要であることを示してきた。最近では、腸内細菌叢が肥満研究においてホットトピックとなっていることから、本研究では、腸内細菌叢の制御メカニズムにおけるNKT細胞の役割について検討した。 NKT細胞と腸内細菌叢との関係性を調べるために、まず腸管に局在するNKT細胞の機能を検討した。NKT細胞リガンドであるa-ガラクトシルセラミド(a-GalCer)を経口投与し、腸間膜リンパ節におけるNKT細胞の活性化を評価したところ、a-GalCer投与24時間後にNKT細胞の活性化が認められた。しかし、脾臓や肝臓におけるNKT細胞の活性化は認められなかった。このことから、a-GalCerの経口投与は腸間膜リンパ節NKT細胞を特異的に活性化する効果的な手法であると考えられた。 次に、腸間膜リンパ節細胞と脾臓細胞をa-GalCer存在下で培養し、上清中のサイトカイン濃度を測定した。IFN-g産生とIL-17産生に着目すると、脾臓細胞ではIFM-g>IL-17であるのに対し、腸間膜リンパ節細胞ではIL-17>IFN-gであった。このことから、腸間膜リンパ節の局在するNKT細胞はIL-17産生が強い特徴があると考えられた。 さらに、a-GalCer経口投与したときの小腸における抗菌ペプチドの遺伝子発現を検討した。a-GalCer投与群では対照群に比べて、a-ディフェンシンやReg3bの発現が増加傾向であることがわかった。このことから、腸間膜リンパ節のNKT細胞を活性化することで、抗菌ペプチドの発現量が変化することが示唆された。 以上から、腸間膜リンパ節におけるNKT細胞の活性化は腸内細菌叢を制御している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腸間膜リンパ節におけるNKT細胞の活性化が、抗菌ペプチドの発現量を変化させていることが示唆され、NKT細胞によって腸内細菌叢が制御できる可能性が考えられたため、おおよその研究の方向性が固められたため。
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今後の研究の推進方策 |
腸間膜リンパ節に焦点をあててNKT細胞の機能を検討してきたが、今後は腸間膜リンパ節だけではなく、小腸や大腸の粘膜固有層、パイエル板に局在するNKT細胞の機能を調べていく予定である。また、a-GalCerを経口投与したときの腸内細菌叢の組成はどのような影響を受けているのかについて、次世代シーケンサーを用いて菌の組成を明らかにしたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度分の助成金はおおむね計画通り使用した。次年度使用額は、翌年度分として請求する助成金と合わせて腸内細菌叢解析やPCR試薬の消耗品費として使用する。
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