研究課題
これまでに、内臓脂肪では酸化ストレス刺激に対する防御機構の破綻が多くの疾患発症に関わること、Gata5-nullマウスにおいては酸化ストレスが増加していること、が報告されていた。そこで我々は、皮下脂肪に比して内臓脂肪で発現が高い転写因子Gata5は、抗酸化分子の発現を誘導し、酸化ストレスに対する防御機構を調節しているのではないか、という仮説を立てた。本研究では、Gata5遺伝子欠損(KO)マウスの表現型解析から、内臓脂肪に特徴的な酸化ストレス調節因子としてGata5の機能的意義を検証し、肥満・糖尿病発症のメカニズムの解明、治療法の開発をおこなった。まずGata5の抗酸化関連遺伝子に対するクロマチン免疫沈降(ChIP)アッセイをおこなった。これまでに脂肪細胞にGata5を過剰発現させると抗酸化関連遺伝子の発現が増加することを明らかにしたが、直接Gata5による調節を受けるかについての報告はなかった。そこで、標的分子のプロモーター領域のGata5結合配列を探索し、Gata5の結合をChIPアッセイ法で測定した。その結果、Gata5は標的分子のプロモーターに存在するGata5結合配列に結合し、標的分子の発現を増大させていることが示唆された。次に、Gata5KOマウスを作成し、普通食および高脂肪食飼育での表現型を分析した。その結果、体重および皮下脂肪組織の重量は、普通食および高脂肪食共にGata5遺伝子の抑制による影響は認められなかった。一方、内臓脂肪組織の重量は、普通食および高脂肪食ともに、野生型に比較してGata5KOマウスで有意に増加した。本研究の結果から、Gata5は内臓脂肪組織に優位に発現し、抗酸化分子の発現を調節することが示唆された。またGata5遺伝子発現の抑制は、内臓脂肪組織重量を増加させたことから、脂肪細胞分化または脂質合成系への関与が示唆された。
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