(背景と研究目的)グルコースを血中に放出する糖産生の主な要素に糖新生があるが、これは筋肉や脂肪組織から肝臓へ流入した乳酸やアミノ酸、グリセロール(糖新生基質)を肝臓でグルコースへ変換する経路である。ゆえに、糖新生制御は生命活動に必須であると考えられるが、糖新生という営みそのものが全身の代謝へ与える影響やそのメカニズムについてはいまだ不明な点が多い。 研究代表者はこれまで全身代謝と①糖新生、②臓器間神経ットワーク機構による代謝制御などに携わってきた。これらをもとに、「糖新生が、グルコース需要の変化にいかに対応するかを、臓器間ネットワークの視点から解明すること」を目指す。 (今年度の研究成果具体的内容)2020年度の研究では、肝臓特異的に糖新生の酵素遺伝子をノックアウトしたマウスを用いた検討を行ったが、血液や肝臓、脂肪組織などの代謝関連分子に関しては、これまで調べた範囲では大きな変化は得られなかった。 (意義・重要性) 肝の糖新生酵素遺伝子のノックアウトが大きな効果を示さなかった理由としては、肝以外の糖新生臓器である腎臓が代償していることがあげられる。腎臓の糖新生臓器としての役割に関してはまだ不明な点が多いが、生理的な状況によっては腎臓は肝臓と等しく血糖維持に寄与している可能性がある。今回の結果は腎臓の糖新生にも着目する必要性を示唆し、多臓器による血糖維持制御の解明のためのアプローチへのヒントを与えた、という点で意義があると考えられる。
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