本研究の目的は、miR-494の代謝調節における役割をin vivoで解明する事であった。miR-494全身ノックアウトマウスは体重や糖代謝には大きな差を認めなかった。一方、寒冷刺激に対しては寒冷耐性を示しており、以前に論文報告を行った培養細胞における検討結果をin vivoで確認できたと思われる。組織学的にmiR494全身ノックアウトマスの褐色脂肪組織は脂肪滴が小さく、鼠径部の皮下脂肪細胞は寒冷刺激前よりUcp1発現が多いことが分かった。代謝ケージを用いた検討により安静時の呼吸商から脂肪酸化の亢進が起こっている事が示唆された。ノックアウトマウスとWTより初代脂肪細胞を作製し、Cell Flux Analyzerでエネルギー代謝の検討を行った。β3受容体刺激薬によりミトコンドリア機能を反映した酸素消費量がmiR-494ノックアウトマウスで上昇し、基質としては脂肪酸添加に良く反応した。この結果からもmiR-494はミトコンドリア機能を抑制的に働く因子である事が示唆され、その発現抑制がミトコンドリア機能、特に脂肪酸酸化を亢進させる事が示唆された。加齢におけるmiR-494の影響について検討したところ、miR-494ノックアウトマウスはWTに比して長寿であり、活動性が保たれている。骨格筋、脂肪組織、脳におけるミトコンドリア量や組織像を観察する予定であったが、予定を延長して長寿の確認を行っているため、計画完了には至らなかった。ヒトiPS細胞のみならず、マウスにおいてもmiR-494がミトコンドリア機能調節の因子である事を明らかとした。
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