研究実績の概要 |
中鎖脂肪酸トリグリセリド (MCT)は, 中鎖脂肪酸で構成される経口摂取可能な脂肪である。我々は、MCTオイルとLCTオイルを同時にマウスに経口投与したところ, MCTオイルがLCTオイル誘導性のGIP分泌を抑制することを見出した。本研究では, MCTのGIP分泌抑制の機序について検討した。12週齢野生型マウスを用いてLCTオイル (オリーブオイル [10mL/kg])および混合オイル (オリーブオイル [10ml/kg]+MCTオイル [3mL/kg])単回投与後の血中GIP濃度, 腸管内リパーゼ活性, 胆嚢収縮量を測定した。混合オイル投与では, LCTオイルに比較してGIP分泌とCCK作用 (腸管内リパーゼ活性, 胆嚢収縮量)の低下を認めた。そしてCCKアゴニストは, 混合オイル投与後のCCK作用とGIP分泌の低下を完全に回復させた。マウス小腸細胞株STC-1と脂肪酸受容体GPR120およびGPR40発現HEK293細胞を用いて長鎖脂肪酸, 中鎖脂肪酸刺激後のCCK分泌と細胞内Ca2+濃度を測定した。STC-1細胞では, ALAはCCK分泌を誘導するが, 中鎖脂肪酸はCCK分泌を誘導しなかった。そして中鎖脂肪酸の添加によってALA誘導性のCCK分泌が低下した。ALAはGPR120およびGPR40発現HEK293細胞の細胞内Ca2+濃度を上昇させたが, 中鎖脂肪酸は上昇させなかった。そして中鎖脂肪酸はGPR120発現細胞においてALA誘導性の細胞内Ca2+濃度を低下させたが, GPR40発現細胞では低下させなかった。よって中鎖脂肪酸は, 長鎖脂肪酸に対して競合的にGPR120シグナルを阻害し, CCK分泌を低下させることが示された。MCTオイルは, CCK作用の低下を介してLCTオイル摂取時のGIP分泌を抑制した。
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