研究課題/領域番号 |
19K09024
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
福井 健司 大阪大学, 医学系研究科, 招へい准教授 (60513009)
|
研究分担者 |
木村 武量 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (70770171) [辞退]
小澤 純二 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座准教授 (80513001)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | インスリン分泌 / BMI / 糖尿病合併症 / β細胞量 / α細胞量 |
研究実績の概要 |
2型糖尿病発症前既往最高BMI(MBBO)による膵β細胞機能(増殖、再生、分化など)の違いを明らかにし、発症前既往最高BMを、2型糖尿病患者の膵β 細胞機能の推移、予後を予測する新たな指標として確立することが本研究の目的である。まず大阪大学医学部附属病院入院患者の臨床データを用いた検討の結果、MBBOが高いほど推定発症時のインスリン分泌能が大きく、その後の経年的なインスリン分泌能の低下はMBBOにより差がないことが分かった。このことからインスリン分泌能推移の予測にMBBOが有効である可能性が示され、この成果はJ Endocr Soc. 2020 Mar 13;4(4)に掲載された。さらに糖尿病合併症進行とMBBOの関連性について検討を行い、糖尿病網膜症および糖尿病性腎症の進行に、受診時の体重は関与しないが、MBBOは有意に関与することが明らかになった。この成果はBMJ Open Diabetes Res Care. 2021 Dec;9(2):e002466に掲載された。膵組織におけるMBBOの影響については、MBBOで群分けした糖尿病患者膵の組織学的検討を行い、膵β細胞の増加傾向および膵α細胞の優位な増加が認められ、第63回日本糖尿病学会学術集会にて報告を行った。最後に細胞生物学的検討により膵β細胞におけるMBBOの意義を調べるため、膵β細胞系培養細胞MIN-6細胞にインスリンを負荷する実験系を作成した。この系を用いて、細胞外に高濃度インスリンを負荷された膵β細胞は、細胞外グルコース濃度センサーであるGLUT2、GLP1R発現が低下し、インスリン分泌が障害される可能性があることを発見、第64回日本糖尿病学会学術集会にて報告を行うとともに、Biochem Biophys Res Commun. 2021 Jan 1;534:702-706に掲載された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床データの解析により、MBBOと関連するインスリン分泌能、合併症、β細胞機能について3報の論文報告と4報の学会報告を行うことが出来た。MBBOと膵島の組織学的所見の関連についても現在論文作成中であり、おおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
現在予定通りに進行中であり、組織学的検討データについて論文作成を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナのため学会がWEB開催となり、現地への交通費などが必要なくなった。本年も、膵α細胞面積を含む形態学的解析結果の論文作成に時間がかかり、論文校正、投稿、採択された場合のオープンアクセス費用が発生しなかった。また膵β細胞株を用いた細胞実験において、細胞は当科に保存されていたものを用いたため、新たな細胞購入が必要ではなかった。このため次年度使用額が発生した。本年度は論文化にかかる費用(追加解析指示があった際の抗体購入、染色キット購入など含めて)、学会が現地開催となった場合にはその交通費などに使用予定である。
|