研究課題/領域番号 |
19K09025
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
田守 義和 神戸大学, 医学研究科, 特命教授 (90379397)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | オートファジー / 褐色脂肪細胞 |
研究実績の概要 |
2019年度の実験計画としては、(1)白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞において、それぞれの細胞で脂肪滴形態を規定するFSP27αとFSP27βが、オートファジーを如何に制御しているのかを細胞レベルで解明すること、および(2)褐色脂肪細胞特異的Atg7欠損マウスの作成の2項目である。 (1)については、COS細胞に発現プラスミドでFSP27αおよびFSP27βを過剰発現することで、白色脂肪細胞特異的に発現して単房性脂肪滴を形成するのに必須のFSP27αはオートファジーを抑制するが、褐色脂肪細胞に豊富に発現し多房性脂肪滴を形成するのに重要なFSP27βはこれを抑制しないことを明らかにした(J Diabetes Investig, 2019)。これはマウスを絶食にしたとき、褐色脂肪細胞でオートファージーが亢進するが白色脂肪細胞では亢進しない現象において、白色脂肪細胞で単房性脂肪滴の形成に与るFSP27αがオートファジーを抑制していることを示す興味深い結果である。 さらに、オートファジーの分子メカニズムを脂肪細胞で詳細に解析するため、アデノウイルスでFSP27を発現させる系を構築した。この系を用いて、FSP27αおよびβが、培養白色脂肪細胞(HW脂肪細胞)および培養褐色脂肪細胞(HB脂肪細胞)でオートファジー経路に介在すると予想しているAMPKやFOXO1とどう関連しているか検討している。 (2)については、Atg7fl/flマウスをUCP-1 Creマウスと交配して、褐色脂肪細胞特異的なAtg7欠損マウスの作成を試みている。 また、マウスの褐色脂肪細胞におけるオートファジーの亢進には、多房性脂肪滴の脂肪分解で生じ、細胞質に増加した遊離脂肪酸が関連しているのではないかと考え、HW脂肪細胞およびHB脂肪細胞で、オートファジーに対する遊離脂肪酸の効果を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
個体レベルの検討として行っている褐色脂肪細胞特異的Atg7欠損マウス作成が遅れているため。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度もFSP27がオートファジーを制御する分子メカニズムの細胞レベルにおける解析を継続して行く。解析の標的分子としては、AMPKとFOXO1に加え、遊離脂肪酸も候補として検討して行く。 褐色脂肪細胞特異的Atg7欠損マウスの作成・解析を継続して行く。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度は、予定していた褐色脂肪細胞特異的Atg7欠損マウスの作成が遅れた事、およびFSP27のアデノウイルス発現系の完成にかかる費用が予定よりも少なく済んだことで予定使用額には至らなかった。 繰越額は、2020年度の褐色脂肪細胞特異的Atg7欠損マウスの完成とそれを使用した実験、および細胞レベルの解析に使用する予定である。
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