2021年度の実験計画としては、(1)白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞において、それぞれの細胞で脂肪滴形態を規定するFSP27αとFSP27βが、オートファジーを如何に制御しているのかを細胞レベルで解明すること、および(2)褐色脂肪細胞特異的Atg7欠損マウスの作成と解析の2項目である。 (1)多房性脂肪滴を形成する3T3-L1培養脂肪細胞を24~48時間、血清除去によるstarvationを行ったところ、細胞内の中性脂肪含量は低下し脂肪滴数も減少した。ウェスタンブロットではatg7の増加とLC3-IIの著明な増加を確認した。このときFSP27αタンパクは減少した。またFSP27βは不変~増加するのが推測された。以上から、単房性脂肪滴形成に関わるFSP27αは培養脂肪細胞でもオートファジーに対して抑制的に機能することが推測された。 (2)については、Atg7fl/flマウスをUCP-1 Creマウスと交配して、褐色脂肪細胞特異的なAtg7欠損マウスの作成を進めようとしている。 マウスの褐色脂肪細胞におけるオートファジーの亢進には、多房性脂肪滴の脂肪分解で生じ、細胞質に増加した遊離脂肪酸が代謝亢進に関連しているのではないかと予想している。また今年度はFSP27αとFSP27βがオートファジーを制御する分子メカニズムを脂肪細胞で詳細に解析するため、FSP27β特異的な欠損マウスを作成した。このマウスの褐色脂肪細胞は白色脂肪細胞と同様に単房性脂肪滴を形成したが、褐色脂肪細胞に特徴的なミトコンドリアの量などには著明な変化が無かった。このマウスの褐色脂肪細胞のウェスタンブロット解析で、LC3-IIの低下を認め、オートファジーの低下を確認した。以上から褐色脂肪細胞においては、オートファジーの活性はミトコンドリアの量とは独立して脂肪滴の形態に密接に関連していることが予測された。
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