研究課題/領域番号 |
19K09027
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
湯浅 智之 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 特任准教授 (50304556)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 可溶性インスリン受容体 / インスリン抵抗性 / 妊娠糖尿病 / 女性ホルモン |
研究実績の概要 |
インスリン受容体は、その細胞外ドメインが切断され可溶性インスリン受容体(soluble Insulin Receptor; sIR)として血中に存在し、糖尿病患者では血中のsIRが有意に増加している(Diabetes, 2007)。本事象を再現するin vitro系を構築し(BBRC, 2014)、インスリン受容体が切断される分子機構を明らかにするとともにインスリン受容体の切断がインスリン抵抗性の要因となることを明らかにしてきた。これは、インスリンクランプ法を用いて血中sIR値が2型糖尿病患者のインスリン感受性と負に相関することと一致する(Diabetologia, 2016)。これまでの研究成果により、in vitro系で女性ホルモンが培養液中sIRを増加させインスリン抵抗性を惹起していることを見出した。本研究では、女性ホルモンによるインスリン受容体の切断とインスリン抵抗性を惹起させる分子機構の詳細を明らかにした。インスリン受容体はカルシウム依存性タンパク分解酵素の一つであるカルパイン2が細胞外に駆出されることにより切断されるが、女性ホルモンにおいても同様の分子機構においてインスリン受容体が切断されていた。一方で、女性ホルモンはこのカルパイン2の遺伝子発現を促進していることを見出した。これは高血糖では誘導されない事象である。女性ホルモンによるインスリン受容体の切断機構はその大部分を高血糖により誘導されるインスリン受容体切断機構と共通するが、両者の違いが明確になることによりさらに妊娠期のインスリン抵抗性の増悪機構の一端を明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
女性ホルモンによるインスリン受容体切断の分子機構は、すでに明らかにした高血糖によるものと共通するものであることを概ね解明するとともに、両者の違いも見出したことから妊娠期のインスリン抵抗性について新たな分子機構を提唱するにいたった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた研究成果は論文発表を行う。また、研究実施計画に従い、癌においてインスリン受容体の切断が果たす役割をこれまでの研究成果も反映させ取り組んでいく。また、インスリン受容体の切断に関わるエクソソーム系についても解析を勧める。
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次年度使用額が生じた理由 |
中心的に取り組んだ研究課題が順調に推移したため物品費が少額となり次年度使用額が生じた。一方で、別の研究課題については翌年度分として請求した研究費と合わせて物品費として使用する予定である。
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