研究課題/領域番号 |
19K09032
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
山田 俊児 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (40454079)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ニューロペプチドY / アデノ随伴ウイルス / Cre-loxP / ジフテリア毒素 / 側坐核 |
研究実績の概要 |
視床下部弓状核(ARH)に存在するニューロペプチドY(NPY)は摂食を強力に促進する神経ペプチドである。そのため、受容体のアンタゴニストは抗肥満薬として開発が進んでいる。申請者は、Cre/loxPシステムを利用してARH以外に存在するNPY発現ニューロンを解剖学的に明らかにした。NPYに関連した抗肥満薬を有効利用するためにも、視床下部のNPY発現ニューロンに関する知見が必要である。そこで本研究では、(1) NPY発現ニューロンを可視化したマウスの作出とその組織学的解析、(2) NPY特異的ノックダウンおよびin vivoカルシウムイメージングを利用した各神経核におけるNPY発現ニューロンの機能解析を行い、視床下部のNPY発現ニューロンの機能とその作用機序を明らかにすることを目的とする。 NPY発現ニューロンを可視化するために、既存のNPY-CreマウスとCre発現細胞に蛍光色素を発現させることのできるレポーターマウスを掛け合わせることを考えたが、マウスの購入が困難だったため断念した。かわりに、静脈投与でマウス脳全域に遺伝子導入できるアデノ随伴ウイルス(AAV)PHP.Bを利用する予定である。 側坐核のNPY発現ニューロンにAAVを用いてジフテリアトキシン受容体を発現させたマウスに、ジフテリアトキシンを腹腔内投与して側坐核NPYニューロンを特異的にノックダウンした。このマウスでは、摂食量の変化は見られなかったが、不安様行動の増加が見られた。現在、視床下部のNPY発現ニューロンの特異的ノックダウンを検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Cre発現細胞に蛍光色素を発現させることのできるレポーターマウスの購入を検討したが、施設の現状等の理由により断念した。そのため、NPY発現ニューロンの全脳解析が遅れている。 側坐核のNPYニューロンを特異的にノックダウンすることが成功し、不安様行動への影響も確認できた。一方、視床下部に関する実験では、各神経核が密接しているため、神経核特異的にNPY発現ニューロンをノックダウンすることが困難であった。同じAAVの投与方法では無理と考え、より細いガラスマイクロピペットによる投与方法を検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
AAVの中でセロタイプ PHP.Bは静脈投与でマウス脳全域に遺伝子導入できる。そこで、AAV (PHP. B)-FLEX-GFPを作成し、NPY-Creマウスの眼窩静脈からこのAAVを投与して、すべてのNPY発現ニューロンをGFPで特異的に可視化する。可視化した細胞の神経投射や神経活動、生理学的必要性などを調べていく予定である。 視床下部の神経核におけるNPY発現ニューロンの部位特異的ノックダウンと機能解析を行う予定である。また、in vivoカルシウムイメージングの準備としてデバイスやAAVの調整を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
NPY発現ニューロンの全脳における可視化のために、AAV PHP.Bの購入並びに作成を考えたが、コロナウイルスの影響があり2月から3月にかけて購入・輸入をできなかったため。現在は販売を再開しているので購入予定である。
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