男性では加齢に伴う精巣機能の低下により、体内のアンドロゲン量の減少が生じる。アンドロゲン減少により老化様の変化が様々な組織に生じるが、アンドロゲン減少が急速に起きた場合には急激な体内環境の変化によりホメオスタシスが破綻をし、男性更年期障害と言われる加齢性腺機能低下症(LOH症候群)が引き起こされる。そこでアンドロゲン補充療法が行われるが、その効果には不明瞭な点が多い。これはLOH症候群で見られる種々の症状が単純にアンドロゲンの低下だけでは説明できないことに起因すると考えられる。 そこで、研究代表者は自律的にアンドロゲンをはじめとした様々なステロイドホルモンを産生する皮膚に着目して解析を行った。その結果、血中テストステロンが加齢に伴い減少するのに対して、高齢マウス皮膚にはテストステロンが高濃度に存在していた。この高齢時の皮膚組織中のテストステロン増加は、毛乳頭に発現するアンドロゲン受容体(AR)を介して体毛の成長を抑制するだけでなく、毛包幹細胞に発現するテストステロン応答分子を介して毛包幹細胞の機能制御に関わっていることを明らかにした。これまで脱毛においてはテストステロンが活性型アンドロゲンと言われる5alpha-ジヒドロテストステロン(DHT)に代謝され、5alpha-ジヒドロテストステロン(DHT)が毛乳頭のアンドロゲン受容体(AR)を介して脱毛が引き起こされることが知られていたが、本研究によりアンドロゲンによる新たな脱毛発症機序の発見に至った。
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