切除不能進行がんに対しては対症療法しか残されておらず,今後QOLを考慮したさらなる低侵襲治療が望まれる.本研究では 「43℃にキュリー点を持つ感温性磁性体を温度計測用プローブとして利用,目標温度到達を磁性体の透磁率変化として体外からモニターするワイヤレス温度計測による低侵襲な温熱療法システムの確立」を目標としている. 当該研究期間では,継続研究で開発したDriveコイルと温度計測のためのPickupコイル一体化ユニット,さらにノイズ低減のためのアナログ回路,誘導加熱するための高出力誘導加熱装置,ロックインアンプ,PCを組み合わせたワイヤレス温度計測・誘導加熱システムを用い,in vitro で発熱実験を行い,抗腫瘍効果としての発熱深度伸深,発熱高率や温度検知向上を目的とし,現在システムユニットの再構成含め継続検証中である. 当該研究期間では,さらに既存の誘導加熱電源を改良し,390kHzの高周波誘導加熱装置を製作し,発熱高率の向上を目指した.その結果,390kHz高周波誘導加熱装置は129kHz高周波誘導加熱装置に比較し,昇温速度・昇温到達温度ともに大きいことが判明した.また平行して質量分析装置(MS)による温熱治療効果,すなわち良悪性の正診率向上も検証継続しており,90%程度が維持できることを確認できた.以上より,概ね周波数を倍加することで発熱高率の向上が確認された.これにより高周波周波数を調整することで治療温度となる到達深度を伸長することが可能になり,今後,いかに深度と周波数を調整するかの課題に取り組むこととなる.今後は周波数変動現象の解析をすすめ,改良を検討し,臨床応用への橋渡し的研究を継続したい. なお本課題は過去年度より再現性を含め検証を継続しており,成果は年度をまたぎオーバーラップしている.
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