研究課題/領域番号 |
19K09058
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
金田 英秀 日本大学, 医学部, 助教 (30598967)
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研究分担者 |
松本 太郎 日本大学, 医学部, 教授 (50366580)
櫻井 健一 日本大学, 医学部, 研究医員 (20366602)
小沼 憲祥 日本大学, 医学部, 研究医員 (50553103)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 乳癌 / 脂肪細胞 |
研究実績の概要 |
昨年度は、乳癌組織内に脂肪細胞由来細胞(tdTomato陽性細胞)が出現することが明らかになったが、その細胞は癌関連線維芽細胞(Cancer-associated fibroblast:CAF)の形質を有していないことが確認された。本年度は、その脂肪細胞由来細胞の形質を明らかにすることを目的とした。その結果、乳癌組織内の脂肪細胞由来細胞の一部が間葉系幹細胞(Mesenchymal stem cell:MSC)、ペリサイトの形質を有する可能性が示唆された。 移植後14日の乳癌組織切片をMSCマーカーのDLK1、PDGFRα、Sca-1で蛍光免疫染色した。その結果、DLK1陽性、PDGFRα陽性、Sca-1陽性のtdTomato陽性細胞がそれぞれ一部に認められた。次に、血管内皮細胞マーカーのCD31で蛍光免疫染色した結果、CD31陽性のtdTomato陽性細胞は認められなかった。続いて、ペリサイトマーカーのNG2、PDGFRβで蛍光免疫染色した結果、NG2陽性、PDGFRβ陽性のtdTomato陽性細胞がそれぞれ一部に認められた。以上の結果より、移植後14日の移植乳癌組織内に出現する脂肪細胞由来細胞(tdTomato陽性細胞)は、血管内皮細胞の形質は持たないが、一部はMSC、ペリサイトマーカーを発現することが示された。 また、tdTomato陽性細胞のソーティングの予備検討として、乳癌組織内に出現したtdTomato陽性細胞を細胞単位で検出できるか検討した。乳癌組織をコラーゲナーゼで一定時間処理し、サイトスピンによりスライドグラスに細胞を付着させ、tdTomato陽性細胞が検出可能か評価した。その結果、tdTomato陽性細胞は検出できなかった。この理由として、コラーゲナーゼ処理の時間、スライドグラスに付着させる際の回転数などの影響が考えられ、さらなる条件検討が必要と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
移植された乳癌組織内に脂肪細胞由来細胞がペリサイト、MSCの形質を有することが示唆された。しかし、検討したマーカーはそれぞれ単染色による評価のみであり、多重染色などのより詳細な解析が必要である。また、乳癌組織をコラーゲナーゼ処理し、スライドグラス上でtdTomato陽性細胞を検出する方法には、さらなる条件検討が必要である。そのため、フローサイトメトリーによるtdTomato陽性細胞のソーティングには至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
tdTomato陽性細胞の形質解析のために、複数の抗体を組み合わせた多重染色による組織学的検討をさらに行う予定である。具体的にはペリサイトマーカーのNG2、PDGFRβの二重染色、MSCマーカーのDLK1、Sca-1、PDGFRαを組み合わせた多重染色を予定している。また、ペリサイトマーカーと血管内皮細胞マーカーの二重染色により、ペリサイトマーカー陽性tdTomato陽性細胞の局在解析も予定している。また、各細胞の定量評価も行う予定であり、その方法も確立していく。 tdTomato陽性細胞を細胞単位で検出するための方法については、コラーゲナーゼ処理時間やスピンの回転数などの条件検討を予定していく。至適条件が確立し、検出可能となればフローサイトメトリーを用いたソーティングによるtdTomato陽性細胞の単離を目指していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
サンプルの追加が必要なため、動物実験に関わる物品などの購入を予定している。また、多重染色などを行うため、試薬などの購入を予定している。また、tdTomato陽性細胞を細胞単位で検出するための予備検討も継続するため、試薬や消耗品などの購入も予定している。
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