研究実績の概要 |
生体肝移植後の胆汁うっ滞性疾患である原発性胆汁性胆管炎(PBC)の3症例と原発性硬化性胆管炎の1症例から採取したPBMCを免疫不全マウスであるBALB/c Rag2-/- IL-2rg-/- (BRG)マウス4-5匹にそれぞれi.p.投与し、再構築の有無を観察した。マウス末梢血中のヒトCD45陽性細胞細胞はいずれもヒト化マウスの基準である1%以上確認され、全例で良好な再構築率(平均47.2%±25.6%)が得られた。これは胆汁うっ滞性疾患以外の生体肝移植後患者(劇症肝炎やアルコール性肝硬変症例など。N=6)から得られたPBMC(平均再構築率 36.7±17.8%), または健常者(n=5)から得られたPBMC(20.9±6.1%)でのヒト化マウスの再構築率と比較してやや高い傾向にあるものの、有意差はなかった。また採取したPBMC分画のTh1, Th2, Th17の分画に胆汁うっ滞性疾患(n=4)とそれ以外の疾患との間に有意差は無かった(Th1 13.4±6.2% vs. 10.9±7.7%, Th2 63.4±11.9% vs. 64.0±19.4%, Th17 16.3±3.3% vs. 17.4±6.8%)。更にヒト化マウスにPBMCを移入するとマウス内でhomeostatic proliferation が生じると共にヒトリンパ球分画としてTh1優位になることを我々の研究室では明らかにし報告した(Fukasaku Y, Goto R, Human Immunol 2020)が, その程度についても胆汁うっ滞性疾患とそれ以外の疾患での違いは見られなかった。今後この再構築されたヒト化マウスの肝障害の程度を検討する予定である。
|