研究課題/領域番号 |
19K09075
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
及川 将弘 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 客員研究員 (90612416)
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研究分担者 |
三嶋 博之 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 助教 (10513319)
矢野 洋 長崎大学, 病院(医学系), 講師 (50380887)
大坪 竜太 長崎大学, 病院(医学系), 講師 (80570043)
永安 武 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (80284686)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 乳がん / リキッドバイオプシー / circulating tumor DNA / トランスレーショナルリサーチ / 次世代シークエンス / copy number analysis |
研究実績の概要 |
HER2陽性乳癌におけるリキッドバイオプシー解析では周術期乳癌20例、転移再発の16例から86の血漿サンプルを収集した。cfDNA濃度の平均は前者の治療開始前で11.1ng/mL、後者の登録時で26.3ng/mLで、転移再発症例で高い傾向を認めた。治療前後の比較が可能であった周術期乳癌の13例において、治療前の平均cfDNA濃度は11.1ng/mL、治療後は24.1ng/mLと、治療後に上昇を認めた。NGSによるcopy number解析を行った周術期の11症例中2例(18%)でctDNAを検出し、1例でHER2増幅を認めた。転移再発の6症例中4例(67%)でctDNAを検出し、うち2例でHER2増幅を認めた。周術期の1例では治療後にctDNAが消失しており、病理学的にも奏功が得られた。転移再発で治療によりCRとなった1例でもctDNAが消失し、経過と一致した。今後、解析を行っていない症例の結果を追加して報告予定である。2014年から2019年の間に緩和ケア病棟に入院し、死亡退院となった転移再発乳癌患者85例を対象として、生存期間と年齢・PPI・Disease free interval (DFI)・治療ライン・転移箇所・原発巣及び転移巣のサブタイプ等の臨床病理学的因子との関連を解析した。PPI score 6点未満(P= 0.001)、Lum-HER2タイプ(P= 0.003)、肝転移がない(P= 0.001)、DFI33ヶ月未満(P= 0.028)が有意に生存期間延長に寄与していた。PPIに加え、サブタイプ等の臨床病理学的因子を加えることにより、より精密に終末期乳癌患者の予後予測が可能であった。今後、論文化の予定である。終末期乳がん患者におけるリキッドバイオプシー研究ではこれまでに10例の症例から血液サンプルを頂き、臨床情報を収集した。こちらもctDNA解析を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
終末期乳がん患者、トリプルネガティブ乳がん患者のサンプル収集は遅れているが、その他の課題のサンプル収集は順調に進んでいる。しかし、度重なる新型コロナ感染症まん延に伴う県外渡航禁止、宿泊禁止の影響で実験室での実験が行えず、進捗が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
HER2陽性乳がん症例における新規リキッドバイオプシー法を用いた治療効果の予測では症例登録期間は完了し、周術期乳癌20例、進行再発乳癌16例の治療前後及び経時的な血漿サンプルを回収している。解析が終了していないサンプルの解析を進め、昨年度解析が終了したサンプルのデータと併せて解析を行う予定である。 末期乳がん症例における新規リキッドバイオプシー法を用いたctDNA解析と予後予測では、現在までに10例の血液検体を採取した。さらに収集と解析を進める。 トリプルネガティブ進行再発乳がん症例における新規リキッドバイオプシー法を用いた治療抵抗性の解析では、これまでに5症例26サンプルを回収しDeep freezerで保管中である。ある程度サンプルが貯まった段階でctDNA解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は新型コロナ感染症まん延による度重なる緊急事態宣言、外出自粛の影響のため、実験室での実験が予定通り行えなかった。消耗品費及び旅費が予定より少なくなったため、次年度使用額が生じた。次年度は残ったサンプルの解析のための消耗品費、延期となった学会発表の旅費に充てる予定である。
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