研究課題/領域番号 |
19K09077
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
和田 真澄 鹿児島大学, 鹿児島大学病院, 医員 (60836112)
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研究分担者 |
関 直彦 千葉大学, 大学院医学研究院, 准教授 (50345013)
夏越 祥次 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (70237577)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 食道扁平上皮癌 / マイクロRNA / エクソソーム / オルガノイド |
研究実績の概要 |
正常食癌組織4検体と食道扁平上皮癌4検体から次世代シーケンサーを用いたRNAシークエンスにより、食道扁平上皮癌(ESCC)マイクロRNA発現プロファイルを作成した。 ESCC・マイクロRNA発現プロファイルから、47種の癌抑制型マイクロRNA(候補)を見出した。その中には、これまでESCCにおいて殆んど報告の無いマイクロRNAが存在していた。本研究では、miR-143前駆体から派生するmiR-145-5p(passenger strand)に着目した。miR-143-5pを食道細胞株(TE-1、TE-8)に核酸導入することで、癌細胞の浸潤能、遊走能の顕著な抑制を認めた。このことから、miR-143-5pは、食道癌細胞における癌抑制型miRNAであることが明らかとなった。 次に、miR-143-5pが制御する機能性ネットワークの探索を行った結果、7つの遺伝子(HMGA2、STMN1、MET、CDK14、NETO2、DPYSL3、TCF3)が、ESCCの癌促進型遺伝子の候補となった。その中でHMGA2が、ESCC臨床検体でもTCGAデータベース上でも最も高発現していた。ルシフェラーゼアッセイにより、HMGA2がmiR-143-5pによって直接制御されていること、また、siRNAを用いてHMGA2をノックダウンすることでESCC細胞の浸潤能、遊走能の顕著な抑制を認めることを確認した。以上の実験より、HMGA2は新たなESCCの分子機序解明に有用な遺伝子であると確認された。プロファイルの解析、ESCCの分子機序解明に有用な遺伝子を検索している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
治療抵抗性・食道扁平上皮癌 マイクロRNA発現プロファイルから、癌促進型マイクロRNAを探索し、高悪性度食道扁平上皮癌・癌細胞に、候補となるマイクロRNAのinhibitorを加え、癌細胞の、細胞増殖能、遊走能、浸潤能、アポトーシス誘導能、抗癌剤感受性試験の機能解析を行う。 低悪性度食道扁平上皮癌・癌細胞に、マイクロRNAを核酸導入し、上記と同様に、機能解析を行う。 上記は概ね、癌抑制miRNAであるmiR-143-5p/3pが制御する遺伝子で実験を進めることができている。 しかし、癌促進型マイクロRNAについてゲノム編集を行い、治療抵抗性に関わる分子経路を探索することを目的としたCRISPR-Cas9システムでのゲノム編集は滞っており、ゲノム編集した食道癌細胞を作成できていない。よって、ゲノム編集を行った癌細胞と、未編集の癌細胞について、網羅的な遺伝子発現解析を行い比較する段階には到達していない。
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今後の研究の推進方策 |
すでに作成したプロファイルに加えて治療抵抗性に至った食道扁平上皮癌患者の血液からエクソソームを分離し、エクソソーム由来のマイクロRNAの発現プロファイル(治療抵抗性・食道扁平上皮癌 エクソソーム由来マイクロRNA発現プロファイル)を作成する。 癌促進型マイクロRNAについてゲノム編集を行い、治療抵抗性に関わる分子経路を探索する。癌促進型マイクロRNAのseed配列を、CRISPR-Cas9システムで、ゲノム編集する。ゲノム編集を施した癌細胞を作製する。ゲノム編集を行った癌細胞と、未編集の癌細胞について、網羅的な遺伝子発現解析を行い比較する事から、癌促進型マイクロRNAが制御する機能性RNAネットワークの探索を行う。治療標的となる分子・分子経路を探索し、ドラッグ・リポジションの考案を行う。ゲノム編集を行った癌細胞から食道癌オルガノイドを作成し、抗癌剤感受試験を行う。また、ドラッグ・リポジションの候補について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で、予定していた打ち合わせを延期せざるを得なかった。打ち合わせ可能となり次第、打ち合わせ費用として2020年度に使用する予定である。
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