研究課題/領域番号 |
19K09078
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
春松 敏夫 鹿児島大学, 鹿児島大学病院, 特任助教 (70614642)
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研究分担者 |
家入 里志 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (00363359)
谷本 昭英 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (10217151)
大西 峻 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 客員研究員 (10614638)
矢野 圭輔 鹿児島大学, 鹿児島大学病院, 特任助教 (30757919)
加治 建 鹿児島大学, 鹿児島大学病院, 特任教授 (50315420)
町頭 成郎 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 客員研究員 (80404523) [辞退]
武藤 充 鹿児島大学, 医歯学域鹿児島大学病院, 講師 (70404522)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 短腸症候群 / 完全静脈栄養モデルラット / 中枢神経の発達評価 / MRI / 拡散テンソル画像 |
研究実績の概要 |
動物モデルを安定的に供給もできており現在も大量腸管切除モデルラットを用いた研究を継続している。これまで短腸症候群に対して基礎および臨床研究を行っている。当グループの臨床データをもとに、臨床において解決すべき問題として、IFALDの予防・治療および残存腸管の順応促進に着目して研究を行っている。短腸症候群は症例数が少ないためエビデンスを創出しにくいという問題点がある。当研究グループでは、大量腸管切除+完全静脈栄養(SBS+TPN)モデルラットに対して、消化管ホルモンであるGLP-2やグレリン(Ghrelin)、臨床において使用されているω3系脂肪酸を用いて、臨床データのみでは解決できない問題点を解決すべく、基礎研究を行っている。今回は、ガス麻酔下に中心静脈カテーテルを留置し、経静脈栄養ルートを確保したラットを3群に分け、Intralipid、SMOF lipid、Omegavenの各脂肪酸を加えた高カロリー輸液の投与を行い、現在は、データ収集をすすめているとことである。 また動物実験施設内には小動物用のMRI撮像装置を備えており、画像の取得も可能である。腸管不全の動物モデルにおける実験プロトコールに関しては、研究分担者の町頭がこの分野のリーディング施設であるカナダ・トロントSick Kids小児外科のAgostino Pierro教授のもとに留学し、現在も進達状況を報告しながら連携をとりカンファレンスを行い、研究を進めている。加えて高度な技術を必要とする画像解析については、研究分担者の大西がハーバード大学付属ボストン小児病院Computational Radiology Laboratory(CRL)へ留学し、画像解析の手法に精通している。こちらについても、自施設内での解析を行いつつ、進達状況を報告しながら連携をとりカンファレンスを行い研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ロードマップでは、2019年度は「長期絶食経静脈栄養モデルに対する神経学的発達の検討」となっている。SBSの術後、全身状態が落ち着くまでには1年程度かかる印象があるため、ヒトの約1年間に相当する14日間をモデルラットの長期絶食期間として設定し観察を行っている。セボフルラン麻酔下に右外経静脈または右大腿静脈から中心静脈カテーテルを留置し、皮下を通して背部に誘導し、経静脈栄養ルートを確保する。ラットを3群に分け、Intralipid、SMOF lipid、Omegavenの各脂肪酸を加えた高カロリー輸液の投与を行っている。また、後記の評価項目について検体採取および評価を行う予定として準備を進めている。 評価項目:生理学的評価(体重、飲水量、尿量、排便量)、生化学的評価(脂肪酸分画、血清AST/ALT、ビリルビン、炎症性サイトカイン、鉄、亜鉛、銅、ヨウ素、葉酸、コリン、ビタミンA, B6, B12、脳組織内のBDNF(脳由来神経栄養因子),total RNA ,total DNA,DNF,GAPDHのmRNA)、形態学的評価(脳重量)、組織学的評価(大脳皮質層構造の変化) 神経学的発達の評価についてであるが、実臨床での症例も評価に加えて行うことができる状況となった。超低出生体重児では、全例に頭部MRI検査を施行しており、生後に消化管手術を要した症例とそうでない症例をコントロ-ルとして評価することが可能であり、そのための評価項目の準備も進めている状況である。 中心静脈カテーテルの事故抜去などのカテーテルトラブルが続いたため、2019年の秋頃よりカテーテルの種類を変更した。カテーテル変更に伴う手技の安定化についても時間を要してしまったが、2020年の春からはカテーテルトラブルも減少し、安定した研究を進めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
SBSは症例数が限られており、臨床情報からだけではエビデンスが得られにくい。動物モデルによる検討は極めて重要であるが、大量腸管切除や長期カテーテル管理などは実験手技が煩雑で、モデル確立に技術を要するが、当グループではすでにモデル動物を確立し、国内では唯一安定した結果を継続的に報告している。確立された動物モデルと蓄積データから、脂肪酸製剤が神経学的発達に与える影響を解明することができる。本研究では大量腸管切除後の長期絶食・完全静脈栄養モデルラットを作成し、脂肪酸製剤による栄養管理が神経学的発達に与える影響についての評価を行う。特にω-3系脂肪酸が重要とであり、ω-6系とω-3系脂肪酸の組成バランスが異なる3種類の脂肪酸製剤を用い検討する。今後は後期の2点についての研究、評価を行う予定である。①大量腸管切除後の長期絶食・完全静脈栄養モデルにおいて、異なる脂肪酸製剤の投与が身体的発達および脳神経の組織学的発達に与える影響を検討する。②MRI画像を用いたDTI解析により脳の発達を評価する また臨床においては過去30余年におよぶSBS患児の治療経験も有している。臨床における問題点を基礎研究で解明することで、臨床応用を視野に入れた研究開発が可能な体制を構築している。神経学的発達の評価については、実臨床での症例も評価に加えて行う予定である。超低出生体重児では、脳の神経発達評価目的に、全例に頭部MRI検査を施行しており、生後に消化管手術を要した症例とそうでない症例をコントロ-ルとして評価することが可能であり、そのための評価項目のデータ収集のための準備も進めている状況である。
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