研究課題
我々は、これまでのヒト乳癌細胞株を用いた研究から、HER3の分解に関わるいくつかのユビキチンリガーゼや分解促進因子、2量体パートナーなどがその生物学的特性に影響することを見出してきている。これらの細胞実験を継続するとともに、本年度は、本学の医療-産業トランスレーショナルリサーチセンターで構築した、乳がん患者組織由来の網羅的遺伝子発現解析データセット(約750例)を用いて、HER3, ER, Nedd4-1をはじめとした7つの因子の発現状況と、患者の予後、薬剤奏功性との相関について検証した。このデーターセットはmRNA発現解析となるため、タンパク質の量的状況を反映しているとまではいえないが、今後の免疫染色解析ベースでの臨床サンプル解析をするにあたり、より検証すべき患者群と優先する標的因子を決めるために実施した。HER3 mRNA転写量が測定されている約750検体のうち、重複症例を除き398検体(症例)で検討に必要な臨床病理学的情報が確定できた。ERとHER3のmRNAの転写量に相関性があることは既知だが、この398例においても同様の傾向を認め、このデータセットが一般化可能であることが確認できた。一定条件下での予後との相関を探索すべく、ホルモン陽性乳癌209例(Stage 0-II)に対象をしぼり7つの候補標的因子について検討したところ、ER発現、HER3発現、Nedd4-1発現の組み合わせパターンで予後と相関するサブセットがあることが確認された。また、他の候補標的因子にも組み合わせによって予後との相関が見られるものがあった。今後は、これらの関係をタンパク量レベルでも検証していくとともに、そのメカニズム仮説について細胞実験へ戻して検証する。
2: おおむね順調に進展している
細胞実験は前年度からの継続テーマとして実施しつつ、本年度は臨床サンプルでの検証に入ることができた。
乳がん患者組織由来の網羅的遺伝子発現解析データでの、標的因子の臨床病理学的な意義をさらに詳しく確認しつつ、正しい患者群を設定してそのタンパク質発現解析に入っていきたい。
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ESMO Open
巻: 4 ページ: -
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