研究課題/領域番号 |
19K09081
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
麻賀 創太 杏林大学, 医学部, 講師 (00327529)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 乳癌 / トリプルネガティブ / HMG-CoAレダクターゼ / 予後因子 / 治療開発 |
研究実績の概要 |
本研究の目的はトリプルネガティブ乳がん(TNBC)を対象としたmicroRNA網羅解析により、HMG-CoAレダクターゼ(HMGCR)とTNBCとの関連性が示されたことを踏まえ、HMCGRを介したTNBCの新規治療法を開発することである。研究初年度の本年は、1.免疫染色を用いて乳がん組織におけるHMGCR発現レベルをカテゴライズし、その結果と予後情報をリンクさせること、2.in vitroでHMGCR高発現乳がん細胞株およびHMGCRノックダウン細胞株を樹立すること、を目標とした。 まず、抗HMGCR抗体を用いて135検体の乳がん組織を対象に免疫染色を実施し、細胞膜優位にHMGCRの発現がみられること、また、症例により染色強度の相違がみられることを確認した。染色強度に評価にあたり、日常診療で頻用されているHER2の免疫組織染色の判定法を参考に、染色強度を0, 1+, 2+ 3+に分類することとした。その結果、染色強度0に相当する症例は存在せず、すべての症例が1+から3+までの3段階のいずれかに分類されることが示された。染色強度とサブタイプ分類の関連性について検討を行ったところ、TNBCではその他のサブタイプに比べ染色強度3+の症例が比較的多く認められた。しかしながら、統計学的な有意差までは見いだせなかった。 In vitro実験では、HMGCR高発現細胞株およびノックダウン細胞株の作成を予定していたため、前者から着手した。pF5A vectorを用いて乳がん細胞株(取得済みであったMCF-7およびSKBR3を使用)へHMGCR遺伝子導入を行い、qRT-PCR法を用いて、遺伝子導入が適切に行われたことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の当初の計画では初年度に分類を含めたHMGCR免疫組織染色の樹立と、in vitro実験におけるHMGCR高発現細胞株およびHMGCRノックダウン細胞株を作成する予定であった。当初の計画に従っておおむね順調に進んでいると考えられる状況である。
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今後の研究の推進方策 |
研究の第1段階として、免疫染色方法の確立や遺伝子導入細胞株の樹立は達成できたが、免疫組織染色強度とサブタイプとの関連性は見いだせず、TNBCとHMGCRとの直接的な関連性を統計学的に証明することはできなかった。症例数が少ないという指摘はされうるので、症例数を増やして再検討するとともに、TNBCとして一括りにせず、TNBCの中で特に予後不良であった症例に焦点を当てて検討を行う方針である。一方、in vitro実験は開始したばかりであるため、現時点で修正を図るべきことはなく、予定通り研究を進めてゆく方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
概ね計画通りに物品を購入したが、試薬等が一括購入により計画よりやや少なく収まったため、繰越金が生じた。繰越金は次年度の実験試薬購入等に使用する予定である。
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