研究実績の概要 |
本研究の目的はトリプルネガティブ乳癌(TNBC)を対象としたmicroRNA網羅解析により、HMG-CoAレダクターゼ(HMGCR)とTNBCとの関連性が示されたことを踏まえ、HMCGRを介したTNBCの新規治療法を開発することである。 まず、HMGCRに対する特異的抗体を用いた免疫染色法により、乳癌組織におけるHMGCR発現レベルをカテゴライズし、発現レベルと予後との関連について検討した。染色強度の判定は日常診療で頻用されているHER2の免疫組織染色の判定法を参考に、0, 1+, 2+ 3+の4段階に分類した。その結果、染色強度0に相当する症例は存在せず、すべての症例が1+から3+までの3段階のいずれかに分類された。染色強度とサブタイプ分類の関連性について検討を行ったところ、TNBCではその他のサブタイプに比べ染色強度3+の症例が比較的多く認められたものの、予後との関連については、統計学的有意差を認めず明らかとはならなかった。 次にHMGCRの発現がTNBCにおける薬剤耐性に関与するかについて検討した。我々はTNBC細胞株(MDA-MB468)を活性化マクロファージと共培養すると化学療法耐性が増すことをpreliminaryな実験系で明らかとしていたため、非活性化マクロファージ(RAW264.7)と共培養したMDA-MB468およびLPS(5ug/ml)+IFNg(10ng/ml)で活性化したRAW264.7と共培養したMDA-MB468におけるHMGCRの発現レベルを比較した。その結果、化学療法耐性を獲得した後者においてHMGCRの発現レベルが増加することが明らかとなり、HMGCRの発現と化学療法耐性との関連が示唆された。 今後、共培養系にpaclitaxelを加え、HMGCRの発現とpaclitaxel耐性との関連、ならびにHMG-CoA阻害剤の効果にについて検討する。
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