研究課題/領域番号 |
19K09082
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
関 朋子 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (70528900)
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研究分担者 |
高橋 麻衣子 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (50348661)
林田 哲 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (80327543)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 乳がん / PRO / スマートフォン |
研究実績の概要 |
Patient reported outcomes (PRO)による臨床症状を医療者が持続的にモニタリングし、適切な医療介入を行うことで、転移再発がん患者の全生存率の延長が得られるという報告がなされ注目を集めている。我々はスマートフォンアプリをクライアントとして、医療情報を経時的に蓄積するプラットフォームを開発済みである。その運用の一環として、乳がん術後補助化学療法の副作用症状を経時的にモニタリングし、PRO報告システムの有無による介入試験を行うことで、化学療法期間中のQOL向上やコンプライアンスの改善、医療経済に対する影響を検証することを目的とする研究を行う。PROは患者が現在の自分のQOLや症状を評価し報告するものであるが、このPROをインターネットによるウェブベースで追跡し、患者ケアに用いる臨床試験が注目されている。我々は、スマートフォンアプリベースのPRO蓄積アプリケーションの開発を行った。このシステムでは、手術時のNational Clinical Database (NCD) データが自動的に紐付けられ、患者がこれを閲覧することが可能である。さらにSNSアプリである「LINE」へ簡単な質問に定期的に答えることで、NCDデータに上乗せして持続的な医療情報を蓄積可能な、いわば情報プラットフォームとして設計されている。本研究では、この情報プラットフォームおよびアプリケーションを用いて、乳がん術前・術後補助化学療法を行った場合に患者QOLの改善が認められるかを検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに施行した、医療情報蓄積プラットフォームおよびSTARアプリケーションの、本研究課題運用に向けたさらなる開発とカスタマイズは次の通りである。現段階ではNCDデータとの紐付け・閲覧システムや、臨床情報を蓄積するデータベース部分、さらにデータ入力を行うクライアントであるアプリケーションの開発が終了した。また、ユーザーインターフェースのさらなる改良や、後述する副作用情報の項目・QOL調査部分の実装など、細かいカスタマイズを行ってきた。今回実装した項目は、抗がん剤治療によって生じる12種類の副作用であり、CTCAE ver 4.0に準拠したグレードを、一般人にもわかりやすい平易な日本語に修正し、LINE APIを利用して、10秒程度の短時間で報告ができるシステムを開発済みである。副作用項目は例えば、食欲不振・便秘・下痢・咳嗽・呼吸苦・排尿障害・倦怠感・ホットフラッシュ・嘔気・嘔吐・痛み・末梢神経障害などを自由にカスタマイズ可能である。また、これら副作用に伴う症状により、コールセンターへ問い合わせた頻度や、救急外来を受診した回数などもアウトカムとして記録可能である。QOL調査部分については、様々なスケールがあるが、QUALYの算出も可能な実績のあるEQ-5D-5Lなどの実装を既に行い、これを利用する。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究開発の方針は以下の通りである。 ● 運用のテストと環境の整備 ー カスタマイズを行ったアプリを、実際に医師や看護師などにテスト使用させ、使用感のインタビューを行う。これにより日常的な使用に耐えるかどうか、改良点の有無などについて議論を行い、改良へのフィードバックを行う。また、本研究に参加する患者の症状を追跡把握する医療クラークや乳がん専門看護師の設置と教育を行い、介入を行うべき患者対応についての共通理解を確立する。 ● 患者使用の実際、およびコンソーシアムの編成と臨床試験の企画 ー 乳がん術後補助化学療法を行う患者を対象として、システムの運用を実際に行う。まずは前向きの観察研究を行い、運用面の可否とPROが実際に収集可能かどうかについての検証を行っていく。ここでも患者のアンケート調査などを通じて、ユーザーインターフェースや運用手順の改良を施行する予定である。これらを行った上で、研究期間の2年度目から前向きの無作為化比較試験を企画していく。STAR介入群と非介入群にランダムに振り分け、乳癌に対する術前・術後化学療法を行う患者を対象に、QOL・Relative dose intensity (RDI)・問い合わせのおよび救急外来受診の頻度、などをエンドポイントとして設定し、差異を検証していく。また副次的に、支持療法の内服に関するコンプライアンス改善の有無や、本システム導入による医療経済に与えるインパクトを検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 適正な使用を行った結果端数が発生した (使用計画) 消耗品費として適正に使用する予定である
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