研究実績の概要 |
Patient reported outcomes (PRO)による臨床症状を医療者が持続的にモニタリングし、適切な医療介入を行うことで、転移再発がん患者の全生存率の延長が得られるという報告がなされ注目を集めている。我々はNCDのシステムを開発した慶應義塾大学医療政策・管理学部の宮田裕章教授とともに、スマートフォンアプリをクライアントとして、医療情報を経時的に蓄積する情報プラットフォームを開発済みである。その運用の一環として、本研究では乳がん術後補助化学療法の副作用症状を経時的にモニタリングし、PRO報告システムの有無による介入試験を行うことで、化学療法期間中のQOL向上やコンプライアンスの改善、医療経済に対する影響を検証することを目的とする。本研究では、73人の乳がん患者を対象として、観察期間の中央値435日間に16,417件の回答を得た。これは、一人あたりの平均回答数が224.9件で、そのうち65.2件(29%)に症状の発症が認められた。また、60歳以上の患者の平均回答数は300件を超え、同期間内の49歳以下の患者からの回答数と比較しても、むしろ有意に多い回答数であった。このことから、年齢を問わずLINE-ePROシステムが患者に受け入れられていると考えられた。また、質問に対する患者の回答率は95.5%であり、海外で行われた同様の臨床研究における回答率が68-75%程度であることを考慮すると、極めて高い回答率であった。これは恐らくLINEという日常的に利用するSNSツールをクライアントアプリとして使用したシステムの優位性が示された結果であると考えられた。
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