研究課題/領域番号 |
19K09087
|
研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
菅沼 伸康 横浜市立大学, 医学部, 講師 (40724927)
|
研究分担者 |
宮城 洋平 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), 臨床研究所, 所長 (00254194)
益田 宗孝 横浜市立大学, 医学研究科, 客員教授 (10190365)
星野 大輔 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), その他部局等, 部長代理 (30571434)
利野 靖 横浜市立大学, 附属病院, 准教授 (50254206)
中山 博貴 横浜市立大学, 医学研究科, 客員講師 (60438158)
吉田 達也 横浜市立大学, 医学部, 助教 (70748350)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | オルガノイド / 甲状腺癌 |
研究実績の概要 |
本研究では、これまでに有効な治療法が確立されていない甲状腺未分化癌のプレシジョンメディシン実現に向けて、患者由来腫瘍オルガノイド (Patient derived organoid; PDO) を用いることにより、短期間での薬剤感受性予測方法の確立と各薬剤の感受性バイオマーカーの同定を目的としている。その手順として、1) PDOの作製、2) 薬剤感受性評価系の確立と臨床結果との比較、3) セレクト―ム解析とマーカー分子の同定、をかかげ、研究計画をたてた。 2019年度は、甲状腺癌オルガノイド樹立を目標として研究を進めた。神奈川県立がんセンターと共同研究2施設において診断・採取された甲状腺正常組織、腫瘍組織を用いて、Sachs らが報告した方法 (Sachs et al. Cell 2018) を基準として、甲状腺オルガノイドに適した条件設定を行い、安定した樹立方法を確立した。 2020年度は、確立した上記方法で正常甲状腺、甲状腺良悪性腫瘍のオルガノイド株を高い樹立率で作成することができるようになり、培養株のストックを増やすことができた。また、レンバチニブなどの一部薬剤において薬剤感受性試験を行いIC50の設定や、薬剤治療前後での様々な因子の変化を確認した。 2021度は、100株以上の作成したオルガノイドを用いて薬剤感受性試験を継続するとともに、現在も確立されていない濾胞性腫瘍の良悪性の鑑別にとりくみ、一定の成果を得ることができた。しかし、コロナ禍における手術症例の減少により、未分化癌患者の症例数を伸ばすことができず、1年間の研究延長申請を行い、甲状腺未分化癌を中心とした甲状腺癌のプレシジョンメディシン実現をめざすこととした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究では、これまでに有効な治療法が確立されていない甲状腺未分化癌のプレシジョンメディシン実現に向けて、患者由来腫瘍オルガノイド (Patient derived organoid; PDO) を用いることにより、短期間での薬剤感受性予測方法の確立と各薬剤の感受性バイオマーカーの同定を目的としている。その手順として、1) PDOの作製、2) 薬剤感受性評価系の確立と臨床結果との比較、3) セレクト―ム解析とマーカー分子の同定、をかかげ、研究計画をたてた。 2019年度は、Sachs らが報告した方法 (Sachs et al. Cell 2018) を基準として、甲状腺癌のオルガノイドに適した条件設定を行い、高い樹立率でオルガノイドを作製することが可能になった。 2020年度は、確立した上記方法で様々な甲状腺オルガノイド作成とともに、薬剤感受性評価系の確立に関する研究を行った。現在、RAI不応性進行再発甲状腺癌に対して保険適応となっている薬剤を中心に、IC 50 を算出し、薬剤使用前後での様々な因子の発現解析を行い、その一部を学会において発表した(2021年6月 第33回日本内分泌外科学会)。 2021度は、100株以上の作成したオルガノイドを用いて薬剤感受性試験を継続するとともに、現在も確立されていない濾胞性腫瘍の良悪性の鑑別にとりくみ、一定の成果を得ることができた。しかし、コロナ禍における手術症例の減少により、甲状腺未分化癌の新規症例が得られず、症例数が少ないままであることから、その解析が遅れている。 また、PDO をヌードマウスの皮下に移植する vivo の実験では、オルガノイドの成長が遅く現在のところかなりの時間を要することが判明した。このため、条件設定等の見直しを行い改良に取り組んでいるが、早期で使用可能な薬剤感受性評価系の確立には至っておらず、当初の予定より遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
研究期間の延長申請を行ったことで、上記で問題となっている甲状腺未分化癌の症例の収集を、共同研究を行っている神奈川県立がんセンター、横浜市立大学附属病院、横浜市立大学附属市民総合医療センターでの周知を再度徹底していくとともに、In vivo での条件設定を再考し短期間で結果が得られるような薬剤感受性評価系の確立を目指す。 その後、薬剤奏功患者由来 PDO (PDO-S) と薬剤耐性患者由来 PDO (PDO-IS) の分泌タンパク質を、下記方法によるセクレトーム解析で網羅的な検討を行い、薬剤感受性予測マーカーの同定を目指す。 また、今まで得られた甲状腺未分化癌以外の組織型から得られた甲状腺癌並びに甲状腺良性腫瘍オルガノイド株を用いて、薬剤感受性評価系の確立を目指すとともに、その他の診断、治療の確立にも取り組んでいきたいと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
初年度は、いまだ確立されていない甲状腺未分化癌の樹立を目標として研究を進めたが、本研究を介するにあたりPreliminaryに行っていた研究機器が使用できたため、当初の予定額よりもかなり物品費を抑えることができた。また、本研究開始当初は検体の収集に滞ることがあり、検体数が伸びない時期があったが、その後の改善により年度末には検体数を増やすことができた。このため、昨年度に余剰分を持ち越した。 2年目は、初年度の持ち越し費用があったため、今年度にさらに持ち越しとなったが、昨年度末に使用機器の修理や修理不能な故障が生じたため、その補填をおこなった。 3年目は、手術症例の減少により、予定した症例数を確保することができず、予算を持ち越す形で研究期間延長の申請を行った。 次年度は未分化癌症例を蓄積しつつ、薬剤感受性試験の確立に向けた取り組みや、甲状腺未分化癌以外の病理組織型についても検討をしていく予定である。
|