研究課題/領域番号 |
19K09088
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
若山 顕治 北海道大学, 医学研究院, 客員研究員 (50646544)
|
研究分担者 |
嶋村 剛 北海道大学, 大学病院, 准教授 (00333617)
島田 慎吾 北海道大学, 医学研究院, 特任助教 (40755576)
深井 原 北海道大学, 医学研究院, 特任講師 (60374344)
木村 太一 北海道大学, 医学研究院, 客員研究員 (90435959)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 臓器灌流 / 肝臓 / 移植 / 脂肪肝 |
研究実績の概要 |
本研究はラット肝臓の体外酸素化機械灌流の至適な灌流条件を確立し、脂肪肝の移植前に体外コンディショニングすると共に、移植前とグラフト機能を評価し、予後予測マーカー確立を目指すものである。目的達成のために、初年度は安定した脂肪肝モデルの作成に着手した。本課題に必要な脂肪肝作成、機械灌流、移植を模倣した体外再灌流系、脂溶性分子の網羅的解析によるグラフト評価等の基礎的な技術が利用できるようになった。また、あらゆる温度に精密に制御できるラット肝臓の機械灌流システムを立ち上げた。 確立した動物モデル、Ex vivo灌流モデルを用いて、正常肝、脂肪肝の虚血再灌流を行い、虚血中に変動する脂質・脂肪酸を質量分析イメージング法で解析した。その結果、胆汁酸関連物質、リゾリン脂質などの幾つかのストレス応答分子を見出し、これらの分子がリガンドとなる受容体とその下流のシグナルが虚血再灌流傷害の進展に関与する可能性を明らかにした。 さらに、これらの解析から得られた幾つかの脂質メディエータが肝細胞、星細胞、クッパー細胞、類洞内皮細胞に与える影響を明らかにするために、夫々の細胞の初代培養、低酸素再酸素化モデルを確立し、当該分子の添加、あるいは、同分子が関与するカスケードの阻害物質、あるいは、既知の虚血再灌流傷害増悪物質との併用効果を検討した。脂肪肝の虚血により主に肝細胞に蓄積する物質と、非実質細胞との細胞間相互作用による傷害増悪には活性酸素種の生成増加は関与しないことが分った。一方、同分子は星細胞を直接収縮させないが、一定の条件下でエンドセリンによる星細胞収縮を増強させる可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は安定した脂肪肝モデルの作成に着手し、虚血中の変動分子を質量分析イメージング法で解析し、幾つかのストレス応答分子を見出した。また、ラット肝臓の機械灌流システムを立ち上げ、移植を模倣した体外再灌流系、種々のグラフト評価解析等の基礎的な技術が利用できるようになった。さらに、肝細胞、星細胞、クッパー細胞、類洞内皮細胞の初代培養、低酸素再酸素化モデルを確立し、メカニズム解析のための方法論も確立した。全体として順調に技術要素が確立された。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き、肝移植モデル、各温度での肝体外灌流の実験モデル確立に注力する。モデルの安定化後には、至適灌流条件の検討 (温度、灌流時間、灌流のタイミング)、灌流液の比較、灌流時の薬剤性コンディショニングの効果等を、移植後再灌流を模倣した単離肝灌流装置でスクリーニングし、良好な治療法はラット肝移植で有効性を確認する。それらの実験で得られる肝組織、血液、灌流液を用いて、肝臓の機能と傷害の評価、傷害予測マーカーの探索を多角的に行い、臓器灌流、コンディショニングの保護メカニズムを解明する。これらの解析は主に、一般の血液生化学検査、病理組織、超微形態(SEM, TEM)、酸化ストレス、脂質変化、細胞死形態 (Apoptosis, Necrosis, Necroptosis, Ferrotosis)、類洞圧―血流調節機構等を多角的に解析する。本研究の試料を用いたそれらの評価法の至適化も進めていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
解析に利用する共同利用機器の故障により、解析ができず、機器使用料金がかからなかったものである。採取試料のイメージング質量分析に使用する共同利用機器が故障し、復旧しなかった。また、共同利用機器 (Xcelligence(R))を利用した細胞増殖のモニタリング実験も、機器故障のため実施できず、使用予定であった特殊なプレートの購入数が予定を大幅に下回った。前者は代替機器が稼働し、後者は復旧したため、2020年度に、当初の予定のとおり実験を実施し、経費を執行する予定である。
|