研究課題
肝移植のリスクとしての脂肪肝組織学的に肝細胞内の脂肪滴の大きさにより定義される。しかし、脂肪滴内での反応はもとより、細胞質に放出された遊離脂肪酸の役割、動態は殆ど解っていない。本研究は肝臓の体外酸素化機械灌流の至適な灌流条件を確立し、脂肪肝の移植前に体外でコンディショニングすると共に、移植グラフト機能評価、予後予測マーカーの確立を目指すものである。数種類のラット脂肪肝モデルを検討し、絶食後高炭水化物食給餌によって5日で作成される大適性脂肪肝モデルを検討に使用した。機械灌流、移植を模倣した体外再灌流系、脂溶性分子の網羅的解析によるグラフト評価等の技術を確立、安定化した。次に、動物モデル、体外灌流モデルを用いて、正常肝、脂肪肝の虚血再灌流を行い、虚血中に変動する脂質・脂肪酸を質量分析イメージング法で解析し、胆汁酸関連物質、リゾリン脂質などの幾つかのストレス応答分子を見出した。これらの分子がリガンドとなる受容体とその下流のシグナルが虚血再灌流傷害の進展に関与する可能性を明らかにした。脂肪肝の虚血により主に肝細胞に蓄積するリゾリン脂質は星細胞を直接収縮させないが、一定の条件下でエンドセリンによる星細胞収縮を増強させる可能性が示唆された。一方で、ある種のリゾリン脂質はストレスに応答して肝細胞の保護性反応を増強するトリガーとなる可能性も示唆され、リゾリン脂質と切り出された脂肪酸、あるいは、脂肪滴内の脂肪酸プールがストレスを正負に制御する因子となることを見出した。しかし、これらの物質の挙動をグラフト修復のために完全に制御するには至っておらず、今後の重要な課題であることを提起する結果であった。
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J Clin Med.
巻: 10 ページ: 1972-1988.
10.3390/jcm10091972.