研究課題/領域番号 |
19K09089
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
瀬谷 和彦 弘前大学, 医学研究科, 助教 (40281919)
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研究分担者 |
于 在強 弘前大学, 医学研究科, 助教 (40624268)
福田 幾夫 弘前大学, 医学研究科, 教授 (50344594)
大徳 和之 弘前大学, 医学部附属病院, 准教授 (50374822)
今泉 忠淳 弘前大学, 医学研究科, 教授 (90232602)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 大動脈弁異所性石灰化 |
研究実績の概要 |
高齢者に好発する大動脈弁狭窄症は、長期にわたる弁の異所性石灰化が重篤化に寄与し、外科的手法による弁置換しか選択肢がない。高侵襲のため弁置換を受けられない患者に加え、重篤化の前の段階で石灰化進行を抑制する薬物治療法の開発への期待が大きい。 令和元年度は、大動脈弁狭窄症患者から得た弁間質細胞(HAVICs)の性状を明らかにすることから始めた。以前、HAVICsが間葉系未分化細胞としての特徴を持つことを、フローサイトメトリーによる細胞選別や弁組織レベルで免疫染色により確認した(BBRC 2013)。しかし、培養状態でのHAVICsの性状は不明であった。これを明らかにするため、P1初代培養細胞を用いて免疫細胞染色により調べた。その結果、HAVICsが間葉系未分化細胞の特性を持つことを再確認した他、すべての細胞が内皮細胞に特異的なマーカー、血管内皮細胞増殖因子に対し陽性であったのに対し、平滑筋細胞や線維芽細胞の存在を示すマーカー、α-平滑筋アクチンを有する細胞はわずかであった。さらに軟骨や脂肪細胞への分化能は有するのに対し、骨芽細胞への分化能を持たないことを確認した。 今後は、これらの特徴を念頭に置き、HAVIC異所性石灰化に寄与すると考えられる細胞外マトリックスタンパク質(マトリックスGlaタンパク質(MGP)、テネイシンX(TNX)など)の作用の分子機序を明らかにしていく所存である。 また、本研究の一環として長期服用で大動脈弁石灰化を起こしやすいことが知られている経口抗凝固薬ワルファリンに加え、骨粗しょう症治療薬として使用されているビタミンKが、プレグナンX受容体を介してBMP2発現を亢進することで石灰化を誘発することを明らかにした(J Bone Miner Metab. 2019, JPET 2020)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HAVICsは、大動脈弁からの細胞単離時、内皮細胞、平滑筋細胞、線維芽細胞の混在が考えられ、性状が不明のままであった。今回その詳細を明らかにしたことは、本研究の土台(基礎)強化につながり、今後の研究遂行を容易にすると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度以降は、予定通りMGPやTNX、またはその両方の低発現、高発現HAVICsを作製し、各種石灰化刺激に対する反応を調べ、異所性石灰化の原因タンパク質を同定すると同時にその分子機構を明らかにしていく。
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