研究課題
高齢者に好発する大動脈弁狭窄症は、長期にわたる弁の異所性石灰化が重篤化に寄与し、外科的手法による弁置換術やカテーテルを使用した弁留置術しか選択肢がない。いずれも高侵襲であり、かつ医療費抑制の観点からして重篤化以前に石灰化進行を抑制する薬物治療法の開発は重要な課題である。令和2年度では、大動脈弁狭窄症患者から得た弁間質細胞(HAVICs)が、内皮細胞由来の未分化細胞であり、細胞外マトリックスタンパク質(マトリックスGlaタンパク質(MGP)、テネイシンX(TNX)など)の発現が、遺伝子やタンパク質両方とも著しく低下することを確認した(J Pharmacol Sci. 2021)。しかし、弁石灰化には、骨形成タンパク質(BMP2)-Smad1/5/8経路の他、トランスフォーミング増殖因子(TGF-β)-Smad2/3を軸とした経路の存在が考えられている。令和3年度はさらに、HAVICsに対してTGF-β1, 2が与える影響について検討した。その結果、いずれもHAVICs石灰化を誘発せず、Smad2/3のリン酸化やMGP及びTNX発現変化に影響を与えなかった。以上の結果は、大動脈弁狭窄症における異所性石灰化のさらなる進行がBMP2-Smad1/5/8シグナリング経路を軸に起こり、TNXやMGP発現低下に影響を与えることを強く示唆している(投稿準備中)。また、本研究に関連する成果として、石灰化能の高いCD34陰性HAVICsにおいて、発生に関わる分泌タンパク質Wnt5aが石灰化を抑制する作用を持ち、石灰化した弁では代償的に発現が亢進することを見出した。また、薬物開発の観点から心筋保護作用が知られているresveratrolの4量体hopeaphenolがウイルス感染による自然免疫の亢進を抑制する作用があることを見出した(J Pharmacol Sci. 2022)。
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Journal of Pharmacological Sciences
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