研究課題/領域番号 |
19K09093
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
大塚 愛二 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (50168986)
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研究分担者 |
品岡 玲 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (90724500)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 遺体手術手技研修 / CST / 防腐固定処置 / 低濃度ホルマリン |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、遺体手術手技研修(CST)に適した安全で生体に近い感触のご遺体を低コストで防腐固定処置を実現するため、低濃度ホルマリン固定法を確立することである。そのために、(1)目標臓器における固定液注入方法の確立、(2)固定液組成の確立(還流液量とホルマリン濃度)、(3)実際の使用に際しての評価を行い、その結果、手術体位をとれる関節可動域を確保でき、腐敗しないで、手術手技対象臓器の適切な固定状態の確立を図り、CSTが安全で効果的に推進できるようにする。 令和元年度には分光光度法の一つであるアセチルアセトン法を利用しホルマリン濃度の定量法を確立し、脳の防腐固定について検討した。その結果、髄注による追加固定を行うことで脳脊髄液のホルムアルデヒド濃度が上昇しCSTに耐えうる脳の固定を行うことができた。 令和2年度は、死後硬直の有無による固定後の関節可動性の評価を目的として、ラットを用いて、関節可動性のある防腐固定処理法の検討を行った。これまで、客観的な評価方法が無かったので、荷重と関節可動による伸展変化量を数値化する方法を開発した。安楽死させたラットの後肢にタコ糸を結びけて引っ張り、高精度バネばかりで1㎝可動に要する引っ張り荷重を測定した。この方法を用いて固定前に死後硬直の解除を行った場合と解除しなかった場合に低濃度ホルマリン固定後の関節可動性の評価を比較した。死後硬直の解除しなかった場合(1cm伸展可動に要する引っ張り荷重の平均=239.9g)に比べて解除した場合(同平均=132.7g)の方が有意に関節可動性に優れることが客観的に証明された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度には、ラットを用いて関節可動性の評価法を確立し、死後硬直の有無による防腐固定処置後の関節可動性について客観的に評価できた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で得た知見をもとにCST用解剖体の防腐固定処置を行い、最終的な評価を行う予定である。令和3年度も岡山大学において臨床応用解剖実習が実施される計画であるので、その計画に沿った形で研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会発表予定としていた日本解剖学会総会が新型コロナウイルス感染拡大防止のために中止となり、予定していた出張旅費を使用しなかった。また、当初の予定のCSTが一部新型コロナウイルス感染拡大防止のため中止となったものもあり、評価などの検討が予定したほどは進まなかった。令和3年度は、これらの点も踏まえ計画的執行と研究の推進を図る。
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