研究課題
本研究の目的は、NASH肝切除モデルにおける肝発癌促進の機序解明を目指し、NASHにおける病態増悪の予防に繋げることである。Western dietの給餌に加え、CCl4を腹腔内投与することでNASH発癌モデル(Tsuchida et al. J Hepatol. 2018)の作成を試みた。このモデルを用いて、肝切除が発癌に与える影響や大建中湯(TU-100)の作用機序を検討するはずであった。しかし24週経過した時点で犠死させたところ、線維化を伴う脂肪肝は形成されていたが、肝発癌は認めなかった。このモデルは作成に長期間を要するため、NASH肝切除モデルにおける肝転移形成を正常肝と比較する検討に変更した。Western dietを16週給餌し、30%肝切除を加えマウス大腸癌細胞MC38を2.0×105個脾注し、2週間後に犠死させるモデルを作成した。①正常肝脾注(肝切除なし)②正常肝脾注(肝切除あり)③NASH肝脾注(肝切除なし)④NASH肝脾注(肝切除あり)の4群を作成し、腫瘍径・腫瘍個数を測定。また転移形成環境の形成に関して、IL-6・STAT3・SAA1のmRNA発現をRT-PCRで測定した。正常肝、NASHともに肝切除を加えると腫瘍径は有意に増大したが、正常肝とNASH肝を比較すると、肝切除を加えた群はNASH肝で有意に腫瘍径は小さかった。肝切除を加えなかった群ではNASH肝で腫瘍径が小さい傾向を認めた(p=0.07)。さらに肝切除ありの正常肝とNASH肝でmRNA発現を比較すると、NASH肝で有意にIL-6、SAA1発現が低下していた。肝切除なしではNASH肝で有意にSTAT3、SAA1が低下していた。以上より、NASH肝では転移形成環境に関わる因子の発現が低下しており、肝切除を加える・加えないに関わらず、腫瘍形成が抑制されると考えられた。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件)
Oncology Reports
巻: 47 ページ: 71-71
International Journal of Oncology
巻: 59 ページ: 59-59
PLoS One
巻: 16 ページ: -
Cancer Science
巻: 112 ページ: 3545-3554
Oncotarget
巻: 12 ページ: 333-343