研究課題
血液型不適合肝移植の際に抗体関連拒絶が原因となり遅発性進行性胆管障害が起こりグラフトロスに陥ることがある。胆管障害の原因としては肝内の微小循環障害により虚血性胆管障害が起こっているものと推測される。本研究はこの微小循環障害による虚血性胆管障害を来す動物モデルを作製し、その治療戦略を立てることを目的として開始した。昨年度までの成果として、愛媛大学学術支援センターの動物実験センターにて大学院生2名がラット肝移植モデルの作成を行っているが、本研究に必要な動脈再建モデルにおいて安定して生存が得られるようになり、その次の段階である虚血性胆管障害モデルの作成を行った。モデルとしてa. 動脈非再建モデル、b. 動脈再建+1週間後に動脈結紮、c. 動脈再建+2週間後に動脈結紮、d. 動脈再建+3週間後に動脈結紮の4群を作成し、一定期間経過後に犠死せしめて病理組織をコントロール群(動脈再建モデル)と比較検討した。実臨床に類似した虚血性胆管障害を一部のモデルにおいて認めたが、個体差が大きく、安定したモデルの作成には至らなかった。しかしながらラット動脈再建肝移植モデル+動脈結紮により虚血性胆管障害の再現の可能性が示唆され、今後の手技の安定化により確実な虚血性胆管障害モデル作成が可能となるものと思われた。研究期間全体を通じての研究成果1)愛媛大学総合化学研究支援センターの中の動物実験センターでラット肝移植(動脈再建モデル)を行い、安定した生存を得られるようになった。2)動脈再建肝移植モデルに異時性に動脈結紮を加えたモデルを作成し、病理所見が実臨床に類似した虚血性胆管障害のモデルが再現出来る可能性が示唆された。今後の展望としては循環障害を改善させる薬剤(抗血小板薬、抗凝固因子製剤等)、血管新生を促進させる薬剤(VEGF、bFGF等)による虚血性胆管障害の軽減効果に関して検討する予定である。
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Langenbecks Arch Surg
巻: 407(4) ページ: 1585-1594
10.1007/s00423-021-02398-0