研究課題/領域番号 |
19K09100
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
木村 隆 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (00381369)
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研究分担者 |
佐瀬 善一郎 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (10468126)
斎藤 拓朗 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (20305361)
丸橋 繁 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (20362725)
見城 明 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (40305355)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 手術トレーニング / 拡張現実 / シミュレーター |
研究実績の概要 |
本研究では、拡張現実(Augmented Reality/AR)を応用した手術手技訓練用のシミュレーターの開発を目標に研究を進めてきました。現在までに下記の研究結果が得られました。 1.一般的な医療用画像の保存形式であるDICOMデータを利用して、CADで利用されるSTL形式の臓器のサーフェースデータを作成するための環境を独自に開発しました。Pythonスクリプトを利用して造影CTなどの画像をオープンソースのCADソフトウエアであるBlender内に位置情報を再現しながら配置することができるようになりました。更にプログラミンによってこの操作を短時間で行うことが可能になりました。この作業環境では目的の臓器を画像データを参考に手動で作成することが可能となり、現在の技術では自動抽出が困難な臓器のサーフェースデータを作成することが可能になりました。 2.近隣の企業との共同研究によって手術用シミュレーターの多様な作成方法を確立することができました。原料として段ボールや紙(張り子)を利用することで安価に作成する技術や、金属製の台座を利用することで耐久性と汎用性の高い手術トレーニングのための環境を作ることができました。この技術は人工心臓装着訓練のためのシミュレーターの作成などにも応用されました。 3.1の技術が確立されたことによって、腹腔内のほぼすべて臓器のVR用コンテンツを作成することが可能となりました。また、2の技術によってVR画像を空間座標を再現した形で投影することが可能となりARコンテンツを開発することができました。 4.当初ウエアラブルディスプレイとARを応用した手術トレーニングシステムの作成を進めてきましたが、既存のデバイスでは視線の方向や距離が手術訓練には適さないことが判明したため、タブレット機器を利用したARの鏡視下手術用シミュレーターを試作しました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は上記の4項目について下記のような進捗がありました。 1.小児外科の症例など希少な手術に対応できるように多様な体格の症例のデータセットの構築を進めました。 2.鏡視下手術の際の鉗子の動作を再現できるシステムなどを作成し、より現実の手術に近い環境で手術のトレーニング行えるようになりました。 3.ARを投影する際の座標、大きさの調整を精緻に行うことによって手術環境をより忠実に再現することができました。 4.空間座標を再現することができる金属製の台座を考案することによって、VRでシミュレーションした手術環境を、実物(3Dプリンター等で作成)とVRを融合したARシミュレーターとして短期間で作成することが可能となりました。また、手術に必要な部分のみを最小限に実物として作成し、その他部分をVRで補うことによって手術環境を忠実に再現しつつ、コストを抑えたシミュレーション環境の構築に取り組んでいます。一方でARのVR画像が最前面に投影されてしまうために実物の動作をうまく確認できないという問題が明らかになりました。
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今後の研究の推進方策 |
1.手術件数が少なく、かつ難易度が高い手術を中心に訓練のニーズを抽出しトレーニング環境を構築します。(腹腔鏡下の肝胆膵外科手術、腹腔鏡下の小児外科手術等の訓練用シミュレーターの開発を行います。) 2.若手外科医が経験することが多い低難易度手術用のシミュレーターを開発します。(汎用性が高く、パーツを組み合わせることで広い範囲に応用ができ、更にARによって手術環境を忠実に再現できるシミュレーション環境を構築します。) 3.引き続き多様な症例での臓器データセットの構築を進めます。 4.ARでVRが常に手前に投影される問題について、コンピューターサイエンスの研究室(他大学)との共同研究を計画しています。
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次年度使用額が生じた理由 |
AR用のVRコンテンツを作成するに当たり、現有のコンピューターでは処理速度が間に合わず目的のコンテンツを作成することが出来なくなった。この問題は新たなコンピューターを導入することが解決された。この問題に伴い研究に進捗に遅れが生じ、次年度使用額が生じた。現在は研究を進捗することができ、研究結果をまとめ論文として発表する予定である。
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