研究課題/領域番号 |
19K09101
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
丹藤 創 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80423870)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 先天性横隔膜ヘルニア / 低形成肺 / 気管支軟骨 |
研究実績の概要 |
先天性横隔膜ヘルニア(CDH)に合併する低形成肺は、CDH患児の最も重要な死因の一つである。本研究の目的は、CDH低形成肺の気道軟骨や平滑筋に着眼し、これら間葉系組織の異常が呼吸障害の一因になっているとの仮説を検証することである。これまで、ヒトCDH剖検肺10症例、コントロ-ル肺9症例を解析対象とし、組織学的定量解析を行った。 最初に、肺胞未熟性を評価するため、radial alveolar count (RAC)、気管支軟骨胸膜間距離(CP distance)、免疫組織化学によるTTF-1やKi-67の定量を行い、CDH肺におけるRACやCP distanceの減少、TTF-1, Ki-67の発現上昇を明らかにした。 次に、肺内気管支軟骨に着目し、画像解析を行った。20,000μm2以下の平均軟骨面積は、 CDH患側肺で有意に減少し、非患側肺においても減少傾向を示した。また、径200μm以下の気管支周囲平均軟骨面積も患側肺において減少傾向を示した。 それに対し、径200-400μmの気管支径に対する気管支周囲総軟骨面積の比は患側肺において高い傾向を示した。さらに、この比は、肺成熟の形態学的指標であるRACと負の相関を示した。即ち、ヒトCDH低形成肺における気管支軟骨形成異常が明らかとなった。これらの結果は、肺内気管支軟骨の発達していないげっ歯類のCDHモデルでは得られない知見であり、ヒトCDH肺低形成の病態を考える上で意義深い。今後、軟骨形成異常のメカニズム解明のため、動物モデルを用いて研究を展開していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒトCDH肺内気管支軟骨形成異常を明らかにし、この研究結果を論文として投稿できた。 また、Nitrofen誘発CDHモデルラット胎仔の気管軟骨異常を明らかにし、ヒト肺内気管支異常のメカニズム解明のためのモデルとなりうることを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト気管支軟骨形成異常の病態解明のため、Nitrofen誘発CDHモデルラットの気管軟骨の解析を始めている。Nitrofen誘発CDHモデルラットE21胎仔において、気管軟骨輪数の減少や不完全な気管軟骨輪の出現を確認した。今後、気管軟骨形成時期E16胎仔(間葉細胞の凝集が生じ、軟骨への分化が始まる時期, pseudoglandular stage)の気管領域に着目し、形態学的な解析を行うとともに、LMDで気管を間葉系組織、上皮および平滑筋組織に切り分け、トランスクリプト-ム解析による網羅的mRNAの発現解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ヒト横隔膜ヘルニア剖検肺の組織学的解析が比較的スム-ズにすすみ、抗体を含めた費用が抑えられたため、次年度使用額が生じた。 今後、横隔膜ヘルニアモデル動物を用いたNGS解析を行う予定であるが、CDH胎仔の作製効率が予想より低く、そのサンプルを採取するために多数の妊娠ラットが必要とされるため、その費用として使用していく計画である。
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