研究実績の概要 |
先天性横隔膜ヘルニア(CDH)に伴う低形成肺は、CDH患児の最も重要な死因の一つであり、新たな治療法開発のためには、その病態解明が急務である。我々は、低形成肺における間葉系組織の異常に着眼し、研究を行っている。初年度、ヒトCDH剖検肺10症例、コントロ-ル肺9症例を解析対象として組織学的定量解析を行い、CDH低形成肺における肺内気管支軟骨の異常を明らかにし、論文化した。この結果は、肺内気管支軟骨の発達していないげっ歯類のCDHモデルでは得られない知見であり、ヒトCDH肺低形成の病態を考える上で興味深い。 現在、軟骨形成異常のメカニズム解明のため、Nitrofen誘発CDHラット動物モデルを用いて研究を展開している。E16, E17, E18, E21ラット胎仔の気管を採取し、パラフィンブロックないし凍結ブロックを作製し、免疫組織化学を用いた組織学的定量解析を行った。E18, E21のNitrofen誘発CDHラット胎仔において、高頻度に気管軟骨形成異常が生じることを確認した。さらに、気管軟骨の異常のみならず、気管平滑筋や気管上皮の異常も起こりうることを明らかにした。即ち、この系が、間葉系組織間の相互作用を解明する上で良いモデルとなりうることが示された。 さらに、組織学的解析を継続して行うと同時に、気管軟骨、平滑筋、気管上皮の異常を引き起こす分子メカニズムを明らかにする目的で、レーザ-マイクロダイセクションを行い、上皮、将来軟骨となりうる腹側間葉系組織、平滑筋を切り分け、RNAを抽出し、トランスクリプト-ム解析による網羅的mRNAの発現解析をすすめている。
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