研究実績の概要 |
先天性横隔膜ヘルニア(CDH)の最も重要な死因である肺低形成の病態解明のため、低形成肺における間葉系組織の異常に着眼し、研究を行った。ヒトCDH剖検肺を解析対象とした組織学的定量解析を行い、ヒトCDH低形成肺における肺内気管支軟骨の異常(異常な小型軟骨と大型軟骨の存在)を明らかにし、論文化した。この結果は、肺内気管支軟骨の発達していないげっ歯類CDHモデルでは得られない、ヒト特有のCDH肺低形成の病態の一つと考えられた。次に、気管支軟骨形成異常の病態メカニズム解明のため、ニトロフェン誘発CDHラットモデルを用い、 E17, E18, E21ラット胎仔気管における軟骨形成異常(ヒトの病態に対応する小型および大型異常軟骨の出現)と異常軟骨における一次繊毛の短縮を見出した。さらに、E18胎仔気管を用いて、PIC (Photo-Isolation Chemistry)法を行い、小型異常軟骨部位特異的に発現変動する遺伝子の網羅的解析を行い、mTORC2 サブユニットであるMAPKAP1(SIN1)の発現低下を認め、免疫染色で確認した。また、同時にE18胎仔気管のbulkのRNA-seq解析を行い、CDH群では、有意に繊毛関連の遺伝子群の発現低下と骨格筋の収縮に関する遺伝子群の発現上昇を認めた。 これらの結果から、横隔膜ヘルニアに伴う軟骨形成異常の病態には、繊毛、特に発生期における一次繊毛の異常が関与していることが示唆された。
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