研究課題/領域番号 |
19K09105
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
米戸 敏彦 東京医科大学, 医学部, 客員講師 (10837628)
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研究分担者 |
善本 隆之 東京医科大学, 医学部, 教授 (80202406)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | iPS細胞 / 樹状細胞 / 単球 |
研究実績の概要 |
本研究では、ヒト樹状細胞(DC)前駆細胞を効率よく大量に増やす方法を確立し、その作用機序や癌治療応用への有効性を明らかにすることを目指している。本年度は、iPS細胞由来DC前駆細胞と、さらに末梢血単球も用いて、細胞周期や細胞生死に関与する遺伝子の導入により増殖性の高いDC前駆細胞株の作製を行った。 (1)c-MYCやBMI1、BCL-2等の遺伝子導入によるiPS由来DC前駆細胞の作製:既報によりこれらの遺伝子導入により増殖性が向上する報告があるが、未だ十分な方法になっていない。iPS細胞からDC前駆細胞への分化誘導法については、フィーダー細胞を使うiPS-Sac法やフィーダーフリーの無血清培地系の方法など複数の報告があり、この各分化誘導段階で、c-MYCやBMI1、BCL-2などの細胞周期や細胞生存に関わる遺伝子をGFPとバイシストロニックにTet-On発現誘導性レンチウイルスベクターを用いて導入し、ドキシサイクリン(Dox)存在下で培養し、増殖性の高い細胞が増えてくる条件を見つけ、iPS細胞由来のDC前駆細胞様の細胞ができた。そこで、プライマリーの単球と比較して、FACS解析等により、DCの成熟化やサイトカイン産生、抗原提示能力などを調べたが、少し落ちるがほぼ同等であった。ただ、種々の刺激に対して、比較的細胞死が誘導されやすかった。 (2)c-MYCやBMI1、BCL-2等の遺伝子導入による単球由来DC前駆細胞の作製:末梢血単球に同様に遺伝子導入を行ったところ、増殖性の高いDC前駆細胞様の細胞ができ、プライマリーの単球と同様な性質を示し、細胞死も比較的誘導されにくかった。そこで、さらに、その細胞の有用性等について検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
iPS細胞だけではなく単球も用いて検討を行っているため、多少当初の予定より遅れ気味であるが、DC前期細胞株の作製もできてきており、概ね想定範囲内の進行具合と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、昨年作製したDC前駆細胞株の検討の続きと、新たな方法として、阻害剤等の低分子化合物によるダイレクトリプログラミングによるDC前駆細胞株の作製を検討する。 (1) 昨年度の検討により得られた末梢血単球由来のDC前駆細胞株の性質や活性について、引き続き、検討を行う。さらに、その有用性を示すために、DCヘ分化誘導する際に、デキサメタゾンやIL-27、IL-35、IL-10、PGE2などの免疫寛容性DCを分化誘導する条件で分化誘導し、免疫抑制性のDCができないか検討する。免疫抑制作用としては、末梢血単核求より精製したCD4+T細胞を抗CD3抗体と抗CD28抗体で刺激し細胞増殖を誘導する際に、この種々の方法で分化誘導した免疫抑制性のDCを共存させて、CD4+T細胞の増殖抑制が一番強く見られる条件を明らかにする。 (2) 阻害剤等の低分子化合物によるダイレクトリプログラミングの検討:最近、マウス初代肝細胞をROCK阻害剤とTGF-β阻害剤、GSK3β阻害剤存在下で培養すると、増殖可能な前駆細胞が誘導されることが報告された。そこで、ヒト末梢血単核球を同様に種々の阻害剤や活性化剤存在 下で培養し、DC前駆細胞様の細胞が増えてこないか検討する。増えてくる細胞があれば、FACSによりその細胞表面マーカー解析や、DCが分化誘導されるかについて調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
端数をピッタリ合わすことが難しいため、次年度使用額が生じた。次年度請求額と合わせて、消耗品の購入に充てる。
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