研究課題/領域番号 |
19K09107
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
辻 昭一郎 東邦大学, 医学部, 非常勤研究生 (70726736)
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研究分担者 |
桑原 卓 東邦大学, 医学部, 准教授 (40385563)
田中 ゆり子 東邦大学, 医学部, 講師 (40396685)
近藤 元就 東邦大学, 医学部, 教授 (20594344)
森田 勇人 城西大学, 理学部, 教授 (50274303)
羽賀 博典 京都大学, 医学研究科, 教授 (10252462)
上本 伸二 京都大学, 医学研究科, 教授 (40252449) [辞退]
加藤 悠太郎 藤田医科大学, 医学部, 教授 (70265833)
犬飼 美智子 藤田医科大学, 医学部, 助手 (00839186)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 免疫寛容 / 移植 / マウス / アデノ関連ウイルス / 制御性T細胞 / リンパ球キメラ / PD-1 / IDO産生細胞 |
研究実績の概要 |
レシピエントマウスの肝臓にドナーマウスのMHCを発現させると、マウスに免疫寛容が誘導される。我々はAdeno-Associated Virus (AAV) ベクターを用いてC57BL/6マウスへ肝臓特異的にMHC-1(H2-Kd)遺伝子を導入し、H2-Kdを肝細胞表面に発現させることとした。 2020年度に作成したTakara bio より購入したAAV作製用キット(AAV pro helper free system (AAV2);製品コード6230)に含まれる、pAAV-CMVプラスミドのMCSサイトにGFPまたはMHC-1(H2-Kd)遺伝子断片をIn-fusionクローニング法により挿入した2種類のプラスミドに対し、挿入遺伝子のC57/BL6での肝臓における発現レベルを強化する目的で、CMV Promoter をhuman alph-1 antitrypsin promoter (hAAT) へ、β-globin intron をApoE enhancer (ApoE)への2つの置換を導入した。 2つの置換の導入は、hAATとApoEを既報の論文(Mol. Therapy 12 ; 85-101(2019))をもとにタンデムに配置した人工塩基配列を合成し、pAAV-CMVのCMV Promoter とβ-globin intronとを含む領域を1段階のIn-fusion クローニング法で置き換えることで行った。作成後のプラスミドに目的外の欠損などの変異がないことをシーケンス解析により確認したのち、大腸菌DH5aへの形質転換を行った。形質転換大腸菌をLB培地中(5ml)で生育させた後、目的のプラスミドを抽出精製し、ウィルスベクター構築に必要な濃度(1μg/μl)まで濃縮した。 異なるMHCを持つドナー、レシピエントの組み合わせによるマウスの同所肝移植の技法を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルスの蔓延に伴い緊急事態宣言およびまん延防止等重点措置が発令され、研究が制限されていた。また研究者の勤務先でクラスターが発生したため、研究がその度に一時中断となった。そのため、研究の進行に遅延が生じている。
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今後の研究の推進方策 |
マウスで肝特異的にGFPを発現させるためにAAVウイルスに感染させる手法を用いるが、GFP発現のためのウイルスの濃度、導入方法などの至適条件を確認する。またC57BL/6においてGFPの発現分布、発現量を検討する。また発現量の時間的な変化も検討する。その条件で、MHC-1を発現させるAAVウイルスにてC57BL/6にH2-Kdを発現させ、その発現量をPCRおよびFACSにて確認する。 外来MHCの肝臓への導入により肝障害が誘導されるかを検討するために、MHCの異なる同所肝移植を行うと肝臓が拒絶されるPD-L1ノックアウトマウス(C57BL/6バックグラウンド)にH2-Kdを肝臓特異的に発現させ、肝障害誘導の有無を検討する。 H2-Kdの発現による免疫寛容導入について、細胞障害性T細胞(CTL)の増減を確認する。またCTLがH2-Kdに対するシグナルについて、殺傷性を示すか、寛容性を示すかを検討する。CTL自身のアポトーシス誘導についてもTUNEL等を用いて検討する。この実験においては通常のC57BL/6マウスとC57BL/6バックグラウンドのPD-L1ノックアウトマウスとを比較することにより免疫寛容のメカニズムの解明を目指す。 H2-Kdに対する制御性T細胞(Treg)の関与についても検討する。遺伝子導入後のTregの発現量をFACSを用いて経時的に検討する。また免疫寛容導入後に抗CD25抗体を用いてTregを除去し、免疫寛容の維持においてもTregが必要であるかを検討する。また免疫寛容が導入されたマウスにおいてTregがドナー由来であるかレシピエント由来であるかをH2-KbとH2-Kdの発現にて検討する。 さらにC56BL/6マウスにはMHCとしてH2-Kbが発現しているが、これをH2-Hdに置換したC56BL/6-Kdマウスをノックインの手法にて作成する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により、研究の進行に遅れが生じており、そのため未使用分が発生した。2022年度はノックインマウスの作成、MHCの遺伝子導入実験、遺伝子改変マウスを用いた肝移植実験、放射線感受性実験、リンパ球キメラ実験、臨床症例との比較検討を行う予定である。
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