研究課題
化学療法・放射線療法は、腫瘍細胞に細胞死や細胞老化(治療誘導性細胞老化;以下、TIS)を誘導する。どちらも腫瘍の縮小や無憎悪につながるので、レスポンスとして同列に捉えられることも多いが、老化腫瘍細胞は生き残り、再発や耐性がんの出現につながる点が問題となる。この老化細胞を除去する治療の開発を狙いとして、下記に取り組んだ。前年度に引き続き、老化細胞にてNAD合成代謝が亢進していることに着目した検討を行った。マウスxenograftモデルにて、シスプラチン化学療法とNAD合成への干渉の併用効果を検討した。前年度においては、NAD合成への代謝干渉手段としては、NADサルベージ経路の阻害剤FK866の投与を行った。本年度は、NAD合成の前駆体である栄養成分を、食事から除くことで、腫瘍のNAD合成に干渉できないかを検討した。NAD合成の前駆体栄養分としては、アミノ酸の1つであるトリプトファンや、ナイアシンに分類されるビタミン(ニコチンアミドやニコチン酸)がある。トリプトファン不含食を作製してマウスに与えたところ、非常に強い毒性が出現した。そこで、ナイアシン不含食を作製し、この特殊エサによるマウスの飼育を行った。食事由来のナイアシン制限は、一見、これといった副作用を呈さないことが分かった。これら知見をもとに、担がんマウスにおけるシスプラチン化学療法と、ナイアシン食事制限にもとづくNAD代謝干渉との相乗効果有無を検討することとした。現在、xenograft腫瘍担がんマウスを用いた治療実験に取り掛かっている。
3: やや遅れている
移植実験にてレシピエントとなる免疫不全マウスの供給が停滞するなどして、動物実験を当初の計画スケジュール通りに実施することが出来なかった。
前年度の検討で浮上した栄養学的手法による代謝干渉と、シスプラチン化学療法との相乗効果有無にフォーカスし、研究をすすめる。
計画の若干の遅延等により消耗品費が当初想定よりも僅かに少なくすんだため。次年度の消耗品費に上積みし、より迅速な計画進捗をねらう。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
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