研究課題/領域番号 |
19K09113
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
大塚 将之 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (90334185)
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研究分担者 |
高野 重紹 千葉大学, 医学部附属病院, 講師 (20436380)
久保木 知 千葉大学, 大学院医学研究院, 講師 (50571410)
中台 英里 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (60831500) [辞退]
三島 敬 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (70802560)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 肝内胆管癌 / Notch / Wnt / 肝細胞 / 微小環境 |
研究実績の概要 |
胆管細胞の癌化と考えられていた肝内胆管癌は、その発生において成熟肝細胞のリプログラミングが関与していることが注目され、それらはNotch2を除去することによって胆管癌としての形質・表現型が失われ、少数の肝細胞癌を伴う肝細胞腺腫の形質・表現型に転換することが示された。また、Wntシグナルを抑制することで肝内胆管癌癌源細胞が肝細胞機能を有する細胞へ分化しうることも証明され、癌においても正常細胞と同様な可塑性の存在が考えられる。これらの結果に基づき、肝内胆管癌において,癌細胞あるいは癌源細胞を分化誘導し,肝内胆管癌の発生・形成抑制,悪性度の低下に結び付けられる可能性を検討している。 昨年度までに61例の肝内胆管癌臨床検体を用いて、Notch2、Wntシグナル経路を形成する受容体のLGR5,βカテニンの発現を検討したところ,Notch2陽性例を34例、LGR5高発現例を44例に認め、LGR5高発現例とβカテニンの核内陽性率の相関、外科切除後の予後が有意に不良であることを明らかにした。今年度はビメンチンやMMP2あるいはEpCAMとLGR5との相関を明らかにし、WntシグナルがEMTやstemnessに関係していることを明らかにした。また、in vitroで、Wntシグナルの抑制がビメンチン発現の低下、E-cadherinの発現増強、EpCAMやCD133の発現低下を見出し、肝内胆管癌細胞が、より悪性度の低い細胞へと変化することを示した。3D-cultureでもWntシグナルの抑制によって間葉系細胞への分化が抑えられていた。一方、癌周囲微小環境に関してはTAMを検討する目的でCD163陽性細胞について胆嚢癌組織を用いて検討したところ、CD163陽性細胞が多く存在すると癌細胞のPD-L1発現が増強し、予後不良となることを示した。現在は、肝内胆管癌組織においても検討しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
臨床検体を用いた解析では、概ね順調に進展しており、肝内胆管癌においてNotch2,Wntが肝内胆管癌の悪性度に関係があることを明らかにし、また、癌周囲微小環境が癌免疫機構を修飾していることを示しつつある。また、細胞株によるWntシグナル抑制が悪性度の低下につながることも示されたが、肝内胆管癌のidentity維持について明らかするため、肝細胞への分化を評価しているところである。癌間質微小環境と癌細胞との関係の評価はやや遅れているが、他施設と共同でオルガノイドの作成に取り組んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き研究目的に沿って臨床検体および細胞株を用いて肝内胆管癌のidentity維持機構の解明と可塑性について解析をすすめる。特に、癌間質微小環境の解析に重点を置き、癌細胞、癌源細胞との関係をより明らかにするため、臨床検体を用いた解析をすすめ、それらにおけるFAKのかかわりも検討する予定である。最終的にはマウスゼノグラフトモデルを用いて癌間質微小環境の変化と癌細胞の機能・表現型の変化に注目して検討を加えたいが、時間的制約もあり、並行してオルガノイドでの検討を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、主にコロナ禍で、国際学会への参加がなく、また、国内学会もすべてWeb開催となり、旅費の計上がなかったこと、また、次年度には、他施設との課題関連共同研究の予定があり、物品費などの消耗品費も多くかかることが計画されているため。
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