研究課題
難治性である膵癌の新規治療法を開発するために、チロシン脱リン酸化酵素:protein tyrosine phosphatase non-receptor type3 (PTPN3)が膵癌に対する治療標的分子となり得るかを検証することが本研究の主目的である。令和元年度、PTPN3が膵癌において、増殖・浸潤といった癌悪性形質誘導に関与する結果が得られたので、本年度は、免疫不全マウスを用いてPTPN3を抑制した膵癌細胞株とcontrol siRNA導入膵癌細胞株を皮下移植して、腫瘍形成能、腫瘍増殖能、転移形成能などの比較検討と、形成腫瘍を用いてKi67、VEGFなどの免疫染色を行った。control siRNA導入膵癌細胞株と比較して、PTPN3 siRNA導入膵癌細胞株を皮下移植した腫瘍は有意に形成腫瘍の体積が低下していた。また、Ki67の免疫染色では、control siRNA導入膵癌細胞株と比較して、PTPN3 siRNA導入膵癌細胞株を皮下移植した腫瘍で発現が低下していた。VEGFとPD-L1の免疫染色の結果では両群で有意な差は認められなかった。また腫瘍形成能にも差は認められなかった。これら結果は、PTPN3抑制により癌細胞悪性形質誘導が抑制されるというin vitroにおける結果を裏付ける結果であった。以上より、PTPN3は膵癌では増殖、浸潤に関与しており、新規治療標的となると考えられた。これら研究結果を、2022年度中に論文にして発表する予定である。また、「PTPN3分子発現に関与する経路の網羅的解析」や、「切除標本を用いたPTPN3発現解析」は、十分な結果が得られなかったので、今後引き続いて解析を行い、第2報の報告を行いたい。
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