研究課題/領域番号 |
19K09125
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
冨永 洋平 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (90304823)
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研究分担者 |
井上 重隆 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (00529802)
森山 大樹 九州大学, 大学病院, 准教授 (70586859)
鬼丸 学 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (80529876)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 膵癌 / 局所浸潤 / 癌関連脂肪細胞 / 癌微小環境 / 癌関連線維芽細胞 |
研究実績の概要 |
膵癌は極めて予後不良な疾患であり、新規治療の開発は急務である。特に膵被膜を超えて浸潤した局所進行膵癌の予後は悪く、この制御は重要な課題の一つである。膵癌細胞が膵外に浸潤する際には膵周囲の脂肪組織に浸潤することが多い。脂肪浸潤部では脂肪細胞の退縮や著明な線維化がみられることから、脂肪細胞は癌関連脂肪細胞(Cancer Associated Adipocyte; CAA)として微小環境で浸潤に何らかの影響を与えている可能性が考えられる。本研究では、膵外浸潤におけるCAAの形態的・機能的な変化と癌細胞の浸潤・転移に及ぼす影響を明らかにし、それらを標的とした局所浸潤を制御する新規治療法を確立することを目的とする。 これまでに、まず膵癌細胞の局所浸潤の機序や微小環境についての研究を行った。その結果、微小環境における癌関連線維芽細胞が膵癌の浸潤に大きく関わっていることを明らかにし、これらの3D共培養モデルで浸潤の様子についても検討した。次に、脂肪細胞の三次元での局所浸潤モデルおよびマウス移植モデルを作成し、癌関連脂肪細胞由来の間質細胞(Adipose tissue-derived Stromal Cells; ASC)が浸潤する際には癌関連線維芽細胞に類似した形態を取りながら浸潤し、分布もそれと似ていることを明らかにした。さらにASCが細胞外基質となるコラーゲン線維を分泌し、そこに癌細胞の上清を投与することにより、細胞外基質のリモデリングを起こすことを明らかにした。これはASCが癌細胞の浸潤の際に、より有利な環境を誘導していることを表していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は膵外浸潤における癌関連脂肪細胞の影響を明らかにし、新たな治療法などにつなげることである。現在、浸潤に関わる機序については詳細に検討をすすめることができているが、治療法につながる因子の評価については十分にできていない。
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今後の研究の推進方策 |
癌関連脂肪細胞が癌関連線維芽細胞と同様に膵癌細胞の浸潤に寄与していることがわかったがその詳細な機序は不明である。その要因として癌関連脂肪細胞が分泌する様々なアディポカインやサイトカインが考えられるが、その中から重要な役割を担う因子を同定するために、マイクロアレイ等の発現解析を中心に解析を行っていく。また、同定した因子を標的した阻害剤の投与や発現抑制によって癌細胞の浸潤を抑制できるかどうかを評価し、新たな治療法開発へつなげる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画はおおむね順調に進展しており、資金を有効に利用できたため。 次年度は培養用研究器材、培養用試薬、抗体、受託解析等に使用予定である。
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