研究課題/領域番号 |
19K09129
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
若月 幸平 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (10405384)
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研究分担者 |
右田 和寛 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (40570990)
國重 智裕 奈良県立医科大学, 医学部附属病院, 研究員 (70745801)
中出 裕士 奈良県立医科大学, 医学部附属病院, 研究員 (90745796)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 虚血再還流障害 |
研究実績の概要 |
消化器癌の原発巣の手術後に,急激な転移巣の顕在化と増大を経験することがある.手術侵襲が微小転移巣に何らかの影響を与えている可能性が考えられるが,そのメカニズムの詳細はいまだ不明である.消化器癌の手術では臓器を切除するために血管遮断を必要とすることが多く,温存される臓器にしばしば虚血が起こる.血流の遮断と再還流による虚血再還流障害(IRI)は,その臓器障害により,様々なサイトカイン等のメディエーターの産生や自然免疫反応が惹起される.我々は,IRIによる反応が微小転移の増大を引き起こすとの仮説を立て,①「直接IRIの障害を受けた消化管」および②「直接IRIの障害を受けていない転移巣」の両方で起こっている腫瘍増殖に関与するメディエーターの産生と免疫応答を検討することにより消化管のIRIによる転移巣増大のメカニズムを解明することが本研究の目的である.このメカニズムを解明することで消化器癌の手術後の転移もしくは転移巣増大を軽減することができるものと考えた. まず,マウスの腸管IRIモデルを作成するにあたり,マウスの肺・肝転移モデルの作成準備を行った.マウスの大腸癌細胞株であるCT-26 cellの継代培養を行った.腫瘍細胞をマウスの尾静脈に注入し,肺・肝転移モデルが作成されることを確認した.腫瘍細胞投与後約1週間で1cm程度の肺転移を起こし,遅れて肝転移を起こすことがわかった.マウスに麻酔を施し開腹したのち顕微鏡下に腸間膜の血管を同定し,血管および腸管にクリップを装着し,虚血再還流が行えることを確認した.今後,虚血によりマウスが死亡しない範囲内で数段階に分けて虚血時間を設定する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験に当てられる時間が不足していた.
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今後の研究の推進方策 |
マウスの肺・肝転移モデルを作成し,同系モデル(マウスの癌細胞株と同系のマウスを使用)および異系モデル(ヒトの癌細胞株とヌードマウスを使用)で実験を行う.免疫系の実験では同系モデルを使用する.虚血再還流(IR)群では肝および肺転移巣が1cm前後になった時点で腸管の虚血再還流を行う.非IR群では肝および肺転移巣が1cm前後になってもIRは施行しない.IR群の虚血時間は,虚血によりマウスが死亡しない範囲内で数段階に分けて設定する(0-60 min).IR群では,IR直後およびIR後期の腸管および肺,肝の変化,腫瘍の増大の変化を検討するために,IR前,IR後すぐにsacrificeする検体とIR後数週間経過した後にsacrificeする検体を用意する.転移巣である肺・肝の肉眼的な腫瘍の個数,サイズおよび臓器の質量を測定し,IR群と非IR群で腫瘍の個数,サイズおよび質量を比較する.
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