研究課題
大腸癌同時肝転移症例の原発巣さらには肝転移巣の切除標本を用いて腫瘍組織のMTDHおよびSnail1発現、さらに上皮系細胞マーカー:E-cadherin、間葉系細胞マーカー:Vimentin、N-cadherinの発現を免疫染色により評価、同時性肝転移(+)と(-)群との間でその発現を比較・検討した。結果は、MTDHは同時性肝転移の有無に関わらず95%(19/20)の大腸癌原発巣において発現を認めたが、同時性肝転移(+)群は、(-)症例よりその発現強度の高い傾向を認めた。抹消血液中のMTDH値をELISAで測定したが、両群間に差異は認めなかった。一方、同時性肝転移(+)症例の原発巣でのSnail1の発現は55%(11/20)の症例において認められ、同時性肝転移(-)症例20%、4/20)に比較し高かった。なお、EMTマーカー発現は両群間で明らかな差異を認めなかった。また、同時性肝転移巣においては、全例にMTDH発現の亢進を認めたが、Snail1の発現は8例(40%)においてのみ高発現が認められた。これらSnail1高発現群は、低発現・発現(-)群に比し、肝切除後後のDFSおよびOSが不良な傾向を認めた。大腸癌原発巣由来のSW480、転移巣由来のSW620を用い、MTDH遺伝子・蛋白発現の多寡を検討したが、やや転移巣株に高い傾向を認めた。MTDH特異的siRNAを用い、MTDHのknockdownを試みたが、わずかな発現の低下のみにとどまっており、機能解析にまでは至っていない。【まとめ】同時性肝転移大腸癌原発巣ではMTDHおよびSnail1の高発現がみられ、EMT機構が亢進しており、肝転移形成のプロセスへの関与が示唆された。また、同時性肝転移巣においてSnail1高発現を認めた症例の肝切除後の予後が不良であり、予後因子となる可能性も推察された。
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