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2021 年度 実施状況報告書

肝機能評価指標としてのインドシアニングリーン停滞率の精度向上に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 19K09138
研究機関東京大学

研究代表者

有田 淳一  東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (20463838)

研究分担者 國土 貴嗣  東京大学, 医学部附属病院, 助教 (40802921)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワード肝機能評価 / ICG不耐症 / OATP1B3 / ICGR15分値
研究実績の概要

肝切除術において、術前の正確な肝機能評価が術後の肝不全を予防する。アジアを中心に、インドシアニングリーン15分停滞率(ICGR15)が術前肝機能評価に用いられる一方で、発生頻度は稀ではあるが、このICGR15分値が実際の肝機能と比較して異常高値を呈するICG不耐症が存在する。本研究はこのICG不耐症を解明することで、術前の正確な肝機能評価の精度を向上させることを目的としている。
このICG不耐症の原因の一つとして、肝取り込みトランスポーターであOATP1B3の発現欠損が報告されている。これらのOATP1B3ではintron5にトランスポゾンを介してストップコドンが発生する遺伝子変異が報告された(Kagawa T, et al. Hepatology 2017;65:1065-1068)。
本研究では、2020年度までに肝切除術前にICGR15分値が40%以上であり、術前にGSAシンチグラフィーを施行し肝機能評価を行った10症例のうち、ICG不耐症が疑われる6症例すべてでOATP1B3の発現が欠損していることを確認した。またこれらの症例において、OATP1B3で前述の遺伝子変異がホモで存在することを証明した。
また、転移性肝癌に対して肝切除を行った69例中5例のOATP1B3で前述の遺伝子変異がヘテロで存在していた。しかし、このヘテロ欠損はICGR15分値に影響しないことが明らかになった。
2021年度は、肝切除術前にGSAシンチグラフィーを施行したICGR15分値40%未満の39例(上述のICGR15分値が40%以上であった10例にICGR15分値40%未満の症例を追加)にOATP1B3の発現の有無を調べる免疫染色を行い、全例でOATP3の発現があることを確認した。ICGR15分値が40%未満の症例ではICG不耐症を疑う症例はいなかったことを確認した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初の研究計画通り、OATP1B3のヘテロ欠損がICGR15値に与える影響を明らかにすることができた。ヘテロ欠損のみではICG15分値が本来の肝機能に比較して高値を示すことはないことが解明された。
しかし、ICG不耐症を疑う症例の頻度が少ないため、ICGR15分値40%以上に限ってOATP1B3の発現を調べると、10例中の6例と数が少なすぎることがこの研究のlimitationであった。2021年度はICGR15分値40%未満の39例を追加してOATP1B3の発現を確かめた。さらに症例数を増やしてOATP1B3の発現を調べることが必要と考える。
また、OATP1B3以外の肝の取り込みトランスポーターによってICGR15分値が保たれているのかどうかについての解析はできていない。

今後の研究の推進方策

症例数を増やし、ICG不耐症が疑われるにもかかわらず、既に証明したOATP1B3のintron5にストップコドンが発生する遺伝子変異が認められない症例でOATP1B3のシークエンシングを行い、他の遺伝子変異の有無を確認する必要がある。また、肝においてICGのトランスポーターとして報告されているOATP1B1、OATP1B2、NTCPなどにおいてもICG不耐症との関連を調べる。
また、OATP1B3が肝への取り込みに関係していることが知られているICG以外の薬剤(スタチン、ボセンタン、オルメサルタン、エリスロマイシン、ドセタキセルなど)についても研究をすすめる。
肝切除を行った症例からさらに検体を採取し、OATP1B3の発現に関しての解析をすすめ、頻度やICG値の分布などについて研究をすすめる。

次年度使用額が生じた理由

COVID19感染症の蔓延により研究を一時進められなかったことがあった。また国際学会などでの発表も行わなかった。
次年度では、現段階までの研究結果を学会で積極的に発表する予定であり、経費を必要とする。また、現在論文執筆中であり、英文校正などにも経費を必要とする予定である。

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公開日: 2022-12-28  

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