研究課題
肝切除術において、術前の正確な肝機能評価が術後の肝不全を予防する。アジアを中心に、インドシアニングリーン15分停滞率(ICGR15)が術前肝機能評価に用いられる一方で、発生頻度は稀ではあるが、このICGR15分値が実際の肝機能と比較して異常高値を呈するICG不耐症が存在する。本研究はこのICG不耐症を解明することで、術前の正確な肝機能評価の精度を向上させることを目的としている。このICG不耐症の原因の一つとして、肝取り込みトランスポーターであOATP1B3の発現欠損が報告されている。これらのOATP1B3ではintron5にトランスポゾンを介してストップコドンが発生する遺伝子変異が報告された(Kagawa T, et al. Hepatology 2017;65:1065-1068)。本研究では、2020年度までに肝切除術前にICGR15分値が40%以上であり、術前にGSAシンチグラフィーを施行し肝機能評価を行った10症例のうち、ICG不耐症が疑われる6症例すべてでOATP1B3の発現が欠損していることを確認した。またこれらの症例において、OATP1B3で前述の遺伝子変異がホモで存在することを証明し た。また、転移性肝癌に対して肝切除を行った69例中5例のOATP1B3で前述の遺伝子変異がヘテロで存在していた。しかし、このヘテロ欠損はICGR15分値に影響しないことが明らかになった。2021年度は、肝切除術前にGSAシンチグラフィーを施行したICGR15分値40%未満の39例(上述のICGR15分値が40%以上であった10例にICGR15分値40%未満の症例を追加)にOATP1B3の発現の有無を調べる免疫染色を行い、全例でOATP3の発現があることを確認した。ICGR15分値が40%未満の症例ではICG不耐症を疑う症例はいな かったことを確認した。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
Hepatobiliary Surg Nutr
巻: 10 ページ: 410-412
10.21037/hbsn-21-88
HPB (Oxford)
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10.1016/j.hpb.2022.06.013